最新のミドルレンジ向けSoC”Snapdragon 7+ Gen 2”を搭載する、Xiaomi Redmi Note 12 Turbo(星海蓝/8+256GB)を購入したのでレビューします。
スペック・仕様
Xiaomi Redmi Note 12 Turbo(23049RAD8C) | |
OS | MIUI 14(Android 13ベース) |
SoC | Snapdragon 7+ Gen 2(TSMC 4nm) |
RAM | 8/12/16GB(LPDDR5) |
ストレージ | 256/512GB/1TB(UFS 3.1) |
ディスプレイ | 6.67インチ OLED (1080×2400/60・120Hz) |
サイズ | 161.11×75×7.9mm |
重さ | 181g |
バッテリー | 5000mAh(Mi Turbo Charge 67W/PD 3.0/QC 4) |
カメラ | 64MP(メイン:Omnivision OV64B+OIS) 8MP(超広角:Sony IMX355) 2MP(マクロ:GalaxyCore GC02M1) 16MP(フロント:Samsung S5K3P9) |
インターフェース | USB Type-C(USB 2.0) nanoSIM×2 |
オーディオ | ステレオスピーカー(Awinic aw882xx-SmartPA) 3.5mmステレオミニジャック Dolby Atmos Hi-Res Audio(~192000Hz) |
接続規格 | Wi-Fi 6E(802.11a/b/g/n/ac/ax:2.4/5/6GHz) Bluetooth 5.3 NFC |
セキュリティ | 側面指紋認証/顔認証 |
備考 | Redmi Note 12 Turbo≒POCO F5 Redmi Note 11T Proの後継に当たるモデル 3色カラバリに加えハリー・ポッターコラボモデルも存在 |
開封・内容物
京東(JD.com)のXiaomi JD自営旗艦店から個人輸入。とても綺麗な状態で来ました。
日本への送料を含めて8+256GBだと42154円でした。4/1に注文してFedEx経由で4日後の4/5に届きました。
人生初の海外ECがJDになるとは思いませんでしたが…アカウントロックが面倒くさいのとやり取りが全部中国語なこと以外は、確実に安く綺麗な状態で購入できて”官方直邮”なら配送も速いので悪くなかったです。
内容物はいつも通り、Xiaomi(Redmi)らしく実用的なアクセサリー類が一式揃ってます。
パッケージ内容 |
・Redmi Note 12 Turbo ・ACアダプター(5V3A/20-5V6.2-3.25A:最大67W) ・USB Type-A to Cケーブル ・TPUクリアケース ・TPU保護フィルム(貼付け済み) ・SIMピン ・クイックスタートガイドなどのマニュアル類 |
外観
限定版を除く3色の中で一番シンプルでマットなデザインだった星海蓝を選定しました。冰羽白がシンプルなホワイトであれば一択だったのですが…。
側面フレーム、背面パネルどちらも樹脂製でガラスやアルミ程の高級感はありませんが、加工精度とデザインは流石と言った具合で綺麗かつ余計な主張が無く、落ち着いており好みな外観です。安っぽさはありません。
ボタン類は正面からみて右側に集約されており、上からボリュームキー、指紋認証を兼ねた電源キーが配置されています。左側は何もなく従来のXiaomi端末の配置です。
本体下部にスピーカー、USB Type-Cポート(USB 2.0)とマイク、SIMスロットがあり上部にマイクと赤外線のIRブラスター、スピーカーと3.5mmステレオミニジャックポートが備わっています。
本体下部のSIMスロットは裏表にnanoSIMカードを装着可能です。
Redmi Note 12 Turboの重さは概ね公称値の181gに近い182.4gでした。
6.67インチのディスプレイと5000mAhのバッテリーを搭載していながら180g程度の重さで、200g台のスマホを常用しているとかなり軽量に感じます。
付属のクリアケースを装着した場合は201.4gでした。ケース込みでも比較的軽量です。
ソフト・ハードウェア
中国版のMIUI 14
Redmi Note 12 TurboはAndroid 13ベースのMIUI 14を搭載しています。本国向けのモデルなので中国版MIUIです。
初期状態で256GB中30.2GB使用しており、ブロートウェアの多さと使い勝手の悪さはグローバル版MIUIより悪いです。とはいえ動作に関わるシステム以外のプリインストールアプリは殆ど消せるようになりました。
GMSは中国版MIUIでも利用可能、不完全ながら”adb shell settings put system system_locales ja-JP”を適用することで一部設定やアプリは日本語で利用できます。
ブートローダーアンロックまでの懲役は何時も通り168時間(7日)です。
VoLTE対応
Redmi Note 12 Turboの対応バンドは以下の通りです。au(KDDI)系の回線は使えますが向いていません。
5G | NR:n1/n3/n5/n8/n28a/n38/n41/n77/n78 |
4G | FDD-LTE:B1/B3/B5/B8/B19 |
TD-LTE:B34/B38/B39/B40/B41/B42 | |
3G | WCDMA:B1/B5/B6/B8/B19 |
2G | GSM:B3/B5/B8 |
CDMA:BC0 |
サブ回線のPovo2.0のSIMを入れてみたところ、特に設定せずともAPNが読み込まれVoLTEが有効化されました。
Redmi K20 Pro(Mi 9T Pro)の頃みたいにコマンドから開放することも不要で、通話も問題ありません。
Tianma T7+発光材の6.67インチOLED
Redmi Note 12 Turboは6.67インチのフラットなOLEDディスプレイを採用しています。WekiHome=サンの分解動画を拝見する限り、ディスプレイ素材にTianma T7+発光材を採用しているようです。
サブピクセルはダイヤモンドピクセル配列です。Tianma製ならこの配列でも合点がいきます。
極細ベゼルを採用することで画面占有率93.4%に到達しており、比較で左に置いたPOCO F4 GT(Redmi K50G)が太く感じる程です。12bit(687億色)の色表現にも対応していてDisplayMate A+評価機にも見劣りせず綺麗です。
自動・60/120Hz固定のリフレッシュレート、タッチサンプリングレートは240Hz、アスペクト比は20:9、PPIは395、HDR10+やDolbyVisionにも対応しているようです。
ディスプレイは必要最低限の色彩設定が可能な程度で、MEMCやHDR補正、アップスケール補正機能は使えないのか見当たりません。
Redmi Note 12 TurboのWidevineはL1でした。高画質な動画ストリーミング再生が可能です。
十分高速なMi Turbo Charge 67Wに対応
Redmi Note 12 TurboはXiaomi独自の充電規格()な”Mi Turbo Charge 67W(Xiaomi Hyper Charge)”に対応しており、純正のACアダプターとケーブルが付属しています。型番はMDY-14-EV、日本でもそのまま使えます。
デカいACアダプターと比べると小柄ですが、サイズ的には普通です。付属の67W対応アダプターとケーブルでRedmi Note 12 Turboを充電したところ、Mi Turbo Charge 67Wが表示されました。UPMのYK003C(AVHzY C3)読みでは8.06V6.10AのUSB PD 3.0(PPS)が出力されていました。
Redmi Note 12 Turboをバッテリー残量10%から95%まで、Mi Turbo Charge 67Wで充電するのに掛かった時間は約34分でした。
最大電圧は9.3842V6.251A、最大出力は58WでACアダプターとRedmi Note 12 Turboのカタログスペック通りです。
付属品以外の汎用的なUSB PD対応ACアダプターの場合も確認すると、最大20WのUSB PD(Fixed)に対応する「Anker PowerCore Fusion 10000」で充電したところ、9V2AでUSB PD 3.0(Fixed)のネゴシエーションがされ、約14WがRedmi Note 12 Turboへ供給されました。
USB PD PPSやQC 4を出力できるPowerIQ 3.0(Gen2)対応の「Anker PowerPort Atom III 65W Slim」の45Wポートで充電したところ、8.66V3AでUSB PD 3.0(PPS)のネゴシエーションがされ、約21Wが供給されました。
SHZUKU TOOLBOXとAVHzY C3で45Wポート充電時のUSB PDのパケットをキャプチャーしてみると、双方で以下のやり取りが行われていました。
Xiaomi製品にしては、珍しく3.3〜16.0Vと3.3〜21.0VのUSB PD PPS出力でも無視されずにUSB PD PPSで充電できています。恐らくUSB PD PPS互換のQC 4に対応しているおかげだと思います。
ただ45WポートのUSB PD PPSでも最大23W前後しか出力されなかったため、30分程度の短時間で充電をサクッと済ませたい場合、Mi Turbo Chargeに対応したACアダプターとケーブルで充電する他ありません…。
Redmi Note 12 Turbo以外を67WのACアダプターとケーブルで充電してみると、最大21WのUSB PD PPSに対応するPixel 6では9V2.2AでUSB PD(Fixed)のネゴシエーションがされ、約16~18Wが供給されていました。
120WのXiaomi Hyper Chargeに対応するPOCO F4 GTでは、Mi Turbo Charge 67W(USB PD 3.0 PPS)が有効になり、19.12V3.25A=約55Wが供給されていました。
5Aに対応するUSB-IF認証の「Anker PowerLine II USB 3.1(Gen2)」で、67WのACアダプターとPOCO F4 GTを接続したところQC 3.0が出力され、Mi Turbo Chargeが有効になり約19Wが供給されていました。
Xiaomi機器にはMi Turbo Charge(USB PD PPS)で最大67Wを出力し、それ以外の場合はUSB PD(Fixed)を出力するようです。内部的にUSB PDなだけで本来はType-AポートからUSB PDが出てくるのはあまり良くないですが…。
付属のケーブル以外だとQC充電器と化します。Xiaomi端末の場合は例外的に付属以外のケーブルでもQC 3.0が出力できる場合だとMi Turbo Chargeを吐き出します。まぁ…いつものXiaomi充電器でした。
オーディオ
オーディオエフェクト
Redmi Note 12 Turboはサウンド効果としてDolby Atmosに対応しています。Dolbyエフェクトとしてプリセットやグラフィックイコライザーから音質を調整可能で、他社の端末で有りがちなDolby Atmosが強制的に有効化されてOFFにできないといったこともありません。
Dolby Atmosとは排他利用かつ3.5mmステレオ出力限定ですが、Xiaomi独自のMiサウンドにも対応しておりイヤホンに合わせた調整やイコライザー設定が可能な他、音の好みに合わせたイコライザーカーブを作成可能なパーソナライズサウンド機能も使用できます。
レイテンシーテスト
「Audio Latency Test App」でスピーカー、「ヘッドフォンディレイテスト」で3.5mmステレオミニジャックの出力レイテンシーを計測しました。(Dolby AtmosなどのオーディオエフェクトはOFF)
スピーカーではレイテンシー74ms、バッファサイズ192、3.5mmステレオミニジャックでは大凡26ms程度でした。
Dolby AtmosをOFFにした状態にしては少しだけスピーカーのレイテンシーが遅いですが、実用上は気になるレベルではありません。3.5mmステレオミニジャックは20ms台なので全く問題ないです。
ハードウェア
Redmi Note 12 TurboはディスクリートDACを搭載しないため、Snapdragon 7+ Gen 2に統合されたQualcomm Aqsticオーディオコーデック「WCD9385」を使用します。
ハードウェアレベルでカスタム可能なプレイヤー「Neutron Music Player」で、Redmi Note 12 Turboのハードウェアを確認したところ、デフォルト設定ではスピーカー・3.5mmステレオミニジャック出力共に48000Hz(16bit)でした。
ドライバー設定からHi-Res系の出力を許可すると、スピーカー・3.5mmステレオミニジャック出力共に44100Hz~192000Hzまで選択可能になりました。
表面上は対応していても再生しようとするとエラーになる、所謂”見掛けだけの周波数対応”では無いことを確認します。
ネイティブ192000Hz(24bit)にアップサンプリングしたWav音源で再生テストをしたところ、スピーカー・3.5mmステレオミニジャック出力共にしっかり再生可能でした。
「Device Info HW」から確認できた情報としてRedmi Note 12 Turboは、AbdroPlus=サンがレビューしていたOPPO Pad Air等が採用するAwinic Electronics”aw882xx-SmartPA”を搭載しているようです。
イヤホンジャックの音質については可もなく不可もなく、ここ最近のHi-Resに対応したSnapdragon搭載機は殆どコーデックにWCD9385を採用しているため代わり映えしません。
腐ってもDolby Atmosに対応するスピーカーなので中高域はそれなりですが、低域がスッカスカで音が軽く中高域もどちらかと言えばシャリシャリ系かつ刺さる感じ、音の分離感は上下構成なので悪くはないですが…ありがちなミドルレンジのスピーカーって音質です。
アンプICも大手ではなく中国Awinic Electronics製でコストカットされており、Cirrus Logic製のCS35L41を採用していたPOCO F4 GTやMi 11i(Redmi K40 Pro+)には流石に及ばないです。価格帯も違うので当然ですが…。
ベンチマーク
Geekbench
クロスプラットフォーム対応のCPU性能を計測できるGeekbench 5では、左側のパッケージ名を原神に偽装したものでシングルコア1243・マルチコア3947、右側のストア版でシングルコア1226・マルチコア3989でした。
GovernorはSnapdragon 8 Gen 1等と同じWalt、アプリパッケージ名での動作制御変更はないようです。
クロック周波数が若干低い以外は、コア構成がSnapdragon 8+ Gen 1と完全に同じでSnapdragon 7+ Gen 2は低クロック版の8+ Gen 1より高いCPU性能を発揮しています。クラスターにプライムコアを採用した恩恵だと思います。
前世代のハイエンドSnapdragon 8 Gen 1を超え、Snapdragon 888や865とは比べるまでもないです。
ただしマルチコアに比べて、シングルコア性能はSnapdragon 888~7+ Gen 2で大きくは変わらないです。
最新のGeekbench 6ではシングルコア1318・マルチコア4191でした。
Geekbench 6では5と違い、シングルコア性能ではあまりSnapdragon 7+ Gen 2が振るわない結果になりました。
出たばかりのSnapdragon 7+ Gen 2と新しめのベンチマーク故に、まだ最適化が終わっていないかもしれません。
とはいえマルチコア性能はSnapdragon 8+ Gen 1相当でマルチタスクでは依然として強力です。
3DMark
クロスプラットフォーム対応のグラフィック性能を測るベンチマーク、3DMarkのMOD版(ベンチマークブースト対策)では標準的なWild Lifeでスコア7590(AvgFPS:45.40)、ハイエンド向けのWild Life Extremeでスコア1969(AvgFPS:11.80)でした。
Snapdragon 7+ Gen 2が過去の7シリーズから最も性能向上したであろうGPU(Adreno 725)は、Wild LifeでAdreno 660のSnapdragon 888より約66%(1.66倍)GPU性能が高く、Adreno 650のSnapdragon 865からは約102%(2.02倍)も差を付けて圧倒しました。Snapdragon 8 Gen 1(Adreno 730)に迫っています。
Wild Life Extremeでもハイエンド帯が叩き出すスコア2000以上に、あと1歩のところまで来ています。
Qualcommが性能向上をかなりアピールしていた通り、Snapdragon 7 Gen 1や865のAdreno 600系と比べて、ミドル向けSoCのGPUとしては規格外の性能向上を果たしました。
PCMark for Android
Webブラウジングや2D性能など普段使いのパフォーマンスを計測するベンチマーク、PCMark for Android(work 3.0)のMOD版(ベンチマークブースト対策)ではスコア14787でした。
私がブログ内で測定したデータではトップクラスの結果で、Snapdragon 8 Gen 1も然ることながら8 Gen 2搭載の低価格モデルと同クラスの性能です。
CPDT Benchmark
クロスプラットフォーム対応のストレージ速度を計測するベンチマーク、CPDT Benchmark(Cross Platform Disk Test)ではシーケンシャルライト638.7MB/s・リード1.40GB/sでした。
シーケンシャル性能はUFS 3.1相応に高速なものの、ランダム性能は3年前のLG V60 ThinQ 5G(UFS 3.0)にすら劣り、特にリードで8.22MB/s…とeMMCクラスの速度でかなり悪いです。
UFS 2.1以降のストレージであれば遅くてもランダムリード10MB/sは出るはずですが…もしかしたらコスト削減で選別落ちのNANDメモリかもしれません。
元々8GB以上あるため増設する必要性はありませんが…ストレージの一部を追加RAMとして扱うMIUIのメモリ増設機能は、LPDDR5に対してUFS 3.1にしては遅いストレージが足枷になる可能性がありOFFにするべきです。
Redmi Note 12 Turboの採用メモリ自体はLPDDR5”X”ですが、Snapdragon 8+ Gen 1同様に7+ Gen 2もLPDDR5までの対応となっているため性能を活かしきれません。メモリコピーはLPDDR5相応の性能です。
SoC性能がSnapdragon 8シリーズ並になったことでSnapdragon 888や865搭載機よりは高速です。
余談としてRedmi Note 12 Turboは、LPDDR5(X)にMicron、UFS 3.1にSKHynix製のメモリを採用しています。
mozilla kraken 1.1
シングルスレッド性能とキャッシュが反映されやすいブラウザベンチマーク、mozilla kraken 1.1でWebブラウザの処理速度をテストします。
Snapdragon 7+ Gen 2(Redmi Note 12 Turbo)の合計処理時間は913msで、大台の1000msを下回る実用的な結果になりました。
AnTuTu Benchmark V9
総合的なパフォーマンスを計測するベンチマーク、AnTuTu Benchmark V9.4.8では3回連続の計測で最大スコア975316、最低スコア974038、平均スコア974538でした。かなり安定性が高いです。
バッテリー消費量は最大4%、温度上昇は最大2.8℃で、計測時の最大バッテリー温度は34.5℃でした。
最大スコアこそ及びませんでしたが、平均スコアがSnapdragon 8 Gen 1(POCO F4 GT)より高いにもかかわらずバッテリーは最大4%しか消費せず、電力消費が少なければ必然的に発熱量も少なく済むため、バッテリー温度35℃以下に収まっています。
TSMC 4nmとSnapdragon 8+ Gen 1の設計から更に性能を抑えたおかげで、Samsung製のSnapdragon 8 Gen 1や888では到達できないワットパフォーマンスと安定性をSnapdragon 7+ Gen 2は発揮します。
スロットリングテスト
CPU Throttling Test
CPU Throttling Testを最大負荷の100スレッド、30分間実行してCPU側が発熱しサーマルスロットリング制御やクロックダウンが生じた状態の性能を確認します。
先のベンチマーク結果から予測できたようにSnapdragon 7+ Gen 2は消費電力と発熱量が少なく、Redmi Note 12 TurboはXiaomiのチューニングと大型VC冷却材によって、性能が低下しても83%以上のCPU性能を維持します。
少ない発熱量でサーマルスロットリングが掛かる程加熱しないため、性能低下が酷くないと言うべきでしょうか。
3DMark Stress Test
MOD版(ベンチマークブースト対策)の3DMark Wild LifeとWild Life Extreme Stress Testで、GPUパフォーマンスの持続性を計測します。
通常通りメインタスクで3DMarkのStress Testを行うと、1ループ目で強制的に終了してしまったのですが…ウィンドウ表示にすることで2ループ目以降もベンチマークを継続できたので、その結果を確認します。
標準的なWild Life Stress Testでは最大スコア7479・最低スコア7452、バッテリー消費量64%→55%(9%消費)、温度上昇は33℃→39℃(6℃上昇)、フレームレートは29~55fpsでStability(安定性)は99.6%でした。
ハイエンド向けのWild Life Extreme Stress Testでは最大スコア1940・最低スコア1936、バッテリー消費量55%→47%(8%消費)、温度上昇は37℃→39℃(2℃上昇)、フレームレートは8~17fpsでStability(安定性)は99.8%でした。
発売直後のMIUI 14.0.10.0.TMRCNXMの段階でかなり最適化と安定性の調整が上手く行っているようで、どちらもStability99%でピーク性能こそSnapdragon 8 Gen 1に若干劣りますが、継続的な安定性と性能においては比べるまでもなくSnapdragon 7+ Gen 2が優れています。消費電力もかなり少ないです。
Snapdragon 8+ Gen 1並みということで懸念された発熱に関しては、Wild LifeとWild Life Extreme Stress Testをパフォーマンスモードで連続計測したにも関わらず、バッテリー温度は最大39℃で40℃以内に収まっています。
ゲーム性能
Android・iOS向けFPS計測ツール「WeTest PerfDog」を用いて、Redmi Note 12 Turboのゲームプレイ時の動作(フレームレートなど)を確認します。
Redmi Note 12 TurboもPOCO F4 GT同様にゲームターボのON/OFFで発揮される性能が変わっていたため、バッテリー側は”バランス”、ゲームターボ側は”パフォーマンス”でGoogle Play版を動作させて計測しました。
原神(Genshin Impact)
推奨スペックはSnapdragon 845+RAM4GBですが…実態は最低でもSnapdragon 855+RAM6GBクラスが必要で、カタログスペックやベンチマークだけでは動作を測れない重量級タイトル「原神」でのパフォーマンスを確認。
負荷が軽い”モンド(星落ちの谷)”と重めな”スメール(千尋の砂漠)”にて最高画質60fps設定でそれぞれ20分、合計40分間連続プレイして動作を計測します。
リリース初期のマップ故に負荷が軽くフレームレートの出やすい自由の都”モンド”では、平均58.5fps/スムーズ度2.0/平均バッテリー温度29.6℃でした。
動作が一瞬カクついて見えるジャンクが0.5と殆どなく、大きなフレームドロップのビッグジャンクは軽いモンドとはいえ…なんと0.0、動作のスムーズさを表すスムーズ度も2.0でとても快適な動作です。
テイワット七国の折り返しであり、マップ構造も複雑で表現の増えた知恵の国”スメール”ではミドルレンジスマホでありながら、平均57.4fps/スムーズ度3.0/平均バッテリー温度34.4℃の驚異的な結果を叩き出しました。
モンド比で重いためジャンクは増えますが…それでも3.0、ビッグジャンクは0.5で、従来ではSnapdragon 8+ Gen 1などTSMC製のハイエンド向けSoCを搭載し、最適化や大型VC冷却材を搭載したモデルのみが稲妻やスメールでこれに近い値を出せていました。
私的にはXiaomiが、Redmi Note 12 Turbo発表時に「原神を30分、平均58.2fpsでプレイできる」とアピールしていたのは既にPOCO F4 GT(Redmi K50G)で煮え湯を飲まされたので、誇大広告だと思っていましたが…本当に近いフレームレートを叩き出しており、想像以上で驚愕しています。
モンド・スメールどちらもバッテリーやSoCの内部温度が低い理由は、CPUの平均動作クロックが要因の1つとして挙げられます。
パフォーマンスコアのCortex-A710×3基で2GHz前後、プライムコアのCortex-X2は1.4GHz前後しかクロックが出ていません。スモール(効率)コアのCortex-A510×4基に至っては940MHz程度です。かなり動作クロックが絞られています。
ゲームターボ・MIUIの制御が想定より悪くなく、出来る限り低クロックで負荷に対する必要なクロックと消費電力のバランスが上手く調整できている結果だと言わざるを得ないです。
動作クロックが低いため、当然消費電力も少なくモンドで平均4545.4mW、スメールでは平均5044.9mW程度です。
この消費電力量と動作クロックであれば筐体が樹脂製であっても3725mm²のVC冷却などで放熱が間に合うため、40分間連続で原神をプレイしても最大バッテリー温度が36℃までに収まっているのも納得がいきます。
原神(Genshin Impact):Ver 3.5 | ||
計測結果 | モンド(星落ちの谷) | スメール(千尋の砂漠) |
フレームレート(平均) | 58.5fps | 57.4fps |
スムーズ度 | 2 | 3 |
CPU温度(平均) | 50.9℃ | 58.5℃ |
GPU温度(平均) | 48℃ | 54.1℃ |
バッテリー温度(平均) | 29.6℃ | 34.4℃ |
消費電力(平均) | 4545.4mW | 5044.9mW |
FPower(mW) | 77.7 | 87.9 |
私が原神の画質設定(スマホ版)やブログ内でレビューに用いた、Snapdragon 865~8 Gen 1の計測データと比較すると、平均フレームレートはモンドでSnapdragon 888の平均58.5fpsと同等、スメールではSnapdragon 7+ Gen 2が平均57.4fpsでトップを更新しました。
1FPS辺りの消費電力(FPower)では、旧世代のハイエンドSoCがモンドですら130~155mW消費して55~58fps出していたものを、Snapdragon 7+ Gen 2はたった77.7mWの消費で58.5fpsにて動作します。
スメールでは170mW前後を消費して何とかSnapdragon 8 Gen 1が55fps出せていたのに対し、Snapdragon 7+ Gen 2は半分近い87.9mWで57.4fpsを発揮し、比較的マシなTSMC 7nmのSnapdragon 865すら置き去りにする異次元のワットパフォーマンスを実現しています。
カスタムROMやMagiskモジュールを導入して性能を調整したSnapdragon 8 Gen 1や888を完全に抑えて、素の状態でSnapdragon 7+ Gen 2(Redmi Note 12 Turbo)はこの結果を叩き出しました。素直に称賛できる結果です。
この結果を踏まえるとゲーム用途においてSnapdragon 8+ Gen 1以下のハイエンド向けSoCは、Snapdragon 7+ Gen 2よりも低性能なのに消費電力が高いだけの産業廃棄物と成り果てます。
Snapdragon 7+ Gen 2(Redmi Note 12 Turbo)が3万円台後半から新品で購入可能な以上、わざわざ型落ちのハイエンドモデルをゲーム用途で選択する価値が殆ど無くなりました。余程安く売られているなら話は別ですが…。
カメラ
ハードウェア・ソフトウェア
「Device Info HW」から確認できたRedmi Note 12 Turboのハードウェア構成です。
メインにはOmnivision製のOV64Bを搭載しており、OISにも対応しています。ミドルレンジ向けのセンサーでOPPO Reno 5AやPOCO X3 GT辺りが採用。
超広角はIMX355、マクロにはエントリーからミドルでよく目にするGC02M1を採用したトリプルカメラ構成で、目に見えてコストカットが感じられます。
カメラ | センサー |
メイン 64MP(f/1.8) | Omnivision OV64B(1/2インチ) |
超広角 8MP(f/2.2) | Sony IMX355(1/4インチ?) |
マクロ 2MP(f/2.4) | GalaxyCore GC02M1(1/5インチ) |
フロント 16MP(f/2.4) | Samsung S5K3P9(1/3.1インチ) |
カメラソフトウェアは、独自の撮影エンジン”Xiaomi Imaging Brain 2.0”やカスタムフィルム・フレームに対応したMIUIカメラです。本国モデルなのでシャッター音は最初からOFFです。
作例と雑感
何時も通り数枚のサンプルと雑感です。Snapdragon 7+ Gen 2を目的にRedmi Note 12 Turboを購入したので、個人的にカメラ性能はどうでもいいし、事前にOV64B(1/2インチ)なのは知っていたので期待もしてません。
まぁ…Redmi Note 12 Turboにカメラ性能を求めて買う人がいるとは思えませんし、海外通販を利用してまでスマホを買うような人は複数台所持やカメラ用に大型センサーのカメラ特化機を持ってると思いますから。
比較兼噛ませ犬は似たようなカメラスペックかつMIUIカメラのPOCO F4 GTを置いときます。撮影エンジン”Xiaomi Imaging Brain 2.0”の恩恵なのか、はたまたOV64Bだからなのか不明ながら、IMX686のPOCO F4 GTより色合いが自然でそこそこ綺麗に写ります。
マクロは想像通り2MPのGalaxyCore GC02M1(1/5インチ)らしいどちらも微妙な写り。寄って撮りたいならメインカメラでズームしたり高画素モードから切り取った方がマシです。
GalaxyCore GC02M1を採用して使えるマクロカメラ性能の機種を見たことがないので…付けるだけ無駄だと常々思います。綺麗にマクロ撮影したいなら最低限、5MPのISOCELL 5E9(1/5型)くらいでないと無理。
思っていたよりメインカメラはそこそこ綺麗に写るので、明るい場所での簡単な物撮りくらいには使えそうです。
P30 ProやPixel 3にPixel 6、realme X2 Proなど、一応はある程度のカメラを使用した私的に特別な何かを感じるようなカメラ性能ではないですが、落胆するほど酷い感じでもありません。ミドルレンジ相応です。
まとめ:性能魔法、ミドルレンジの枠を超えたパフォーマンスを示す
良い | 悪い |
・付属品が一式揃っていて実用的 ・樹脂製ながら安っぽくなく落ち着いた筐体デザイン(星海蓝) ・181g、7.9mmで大きさの割に薄くて軽い ・120HzとDolbyVisionに対応のOLEDディスプレイ ・フラットかつベゼルがとても細い ・高速で快適に使える生体認証 ・67Wの高速充電対応&5000mAhバッテリー搭載 ・Dolby AtmosとHi-Res Audioに対応 ・ステレオスピーカーとイヤホンジャック搭載 ・誇張ではなく高性能なSnapdragon 7+ Gen 2 ・最高画質60fpsの原神(720p)をスメールでも平均57fpsで遊べて低発熱・低燃費 ・旧世代のハイエンド向けSoCを過去にする、圧倒的なワットパフォーマンスと安定性 | ・タッチサンプリングレートは240Hz ・ステレオスピーカーだが音質はミドル相応 ・UFS 3.1にしてはランダムリードがかなり遅い ・カメラスペックはミドル相応に控えめ |
近年は、Snapdragon 780/778G/778G+/782G/7 Gen 1と似たような名前と性能の製品を乱立した挙げ句、生産ファウンドリーをSamsung↔TSMCでコロコロ変えて迷走し、MediaTekのDimensityに対抗できる7シリーズを用意しなかったQualcommが、ようやく重い腰を上げてミドルレンジに強力な選択肢を用意しました。
クロック周波数とシステムキャッシュはやや劣るものの、Snapdragon 8+ Gen 1と同じCPU構成でGPUにAdreno 725を採用したSnapdragon 7+ Gen 2は、かつてAMDがExcavator→Zen、NVIDIAがMaxwell→Pascalアーキテクチャに移行した際のジャンプアップを彷彿とさせる飛躍的な性能向上を前世代から果たし、圧倒的なワットパフォーマンスと安定性を発揮します。
前評判時点でTSMC 4nmとSnapdragon 8+ Gen 1譲りのSoC構成ということで、期待値がとても高かったSnapdragon 7+ Gen 2を世界初搭載しながら、最小構成でも8+256GBかつ日本円で約3.8万円台からという驚愕の内容になったRedmi Note 12 Turboは”性能魔法”の通り、驚異的なパフォーマンスを示しました。
もちろん価格相応にコストカットされた部分も多く、軽量化に貢献するとはいえ樹脂(プラスチック)製の筐体に、Tianma T7+かつタッチサンプリングレート240Hzのディスプレイとスピーカー音質やアンプIC、ミドル向けのイメージセンサー。
しかしそれらを差し引いても、Redmi Note 12 Turbo(POCO F5)がミドルレンジの価格帯で販売されている費用対効果は凄まじく、総合的に見てもPOCO F3(Redmi K40)のように、高い完成度を誇るスマートフォンだと思います。