Allwinner A523採用のAndroidタブレット、C107をHiGrace様から提供・レビュー依頼を頂いたのでレビューします。
C107
スペック・仕様
C107 | |
OS | Android 14 |
SoC | Allwinner A523 |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 128GB |
ディスプレイ | 10.1インチ LCD (1280×800/60Hz) |
サイズ | 24.5×15.3×0.9cm(公称値) |
重さ | 542g(公称値) |
バッテリー | 5000mAh |
カメラ | 8MP(メイン:?) 5MP(フロント:?) |
インターフェース | USB Type-C(USB 2.0/480Mbps) microSDカードスロット(最大1TB) |
オーディオ | ステレオスピーカー 3.5mmステレオミニジャック コーデック:LDAC/aptX(HD)/AAC/SBC |
接続規格 | Wi-Fi 6 Bluetooth 5.2※¹ |
防水・防塵 | – |
セキュリティ | 顔認証 |
備考 | 実態はほぼCOOLFAN C107(OEM品?) ※¹マニュアルは5.2、販売ページは画像だと5.4、説明文は5.0でバラバラ |
開封・内容物
1万円台にしてはパッケージ・梱包がマシな方です。搬送保護フィルムのようなものに各部の表記がされています。
内容物は簡素です。ケースやフィルムは別途用意する必要があります。
パッケージ内容 |
・C107 ・ACアダプター(5V2A/10W) ・USB Type-A to Cケーブル ・マニュアル |
所々怪しいものの、マニュアルの内容は日本語表記でした。RAMの部分を堂々と”10G”と記載している時点で、既に(色々)アレですが…。
デザイン・外観
一昔前のAndroidタブレットと言った印象の外観。価格相応の質感です。余計な記載等が無くシンプルなのは良いです。
ポート類は上部(横持ち時:左側)にまとまっており、microSDカードスロットはカバーを開けて挿入する昔のタイプです。SIMピン不要なのは良いと思います。
重さは507.7gでした。そこそこ重く、持ち続けて使うのは疲れると思います。
10インチで500gを切るタブレットもそれなりに存在しているため、C107を薄くて軽いスリムボディとは呼べないです。
OS:作り込み不十分な謎のAndroid 14
C107はAndroid 14ベースで、多少はカスタマイズされてると思われる(?)AUMI OS 2.0を搭載していました。プリインストールアプリはGoogle系が主で、比較的余計なアプリは少ない方です。
所々日本語化されていない部分もある他、仮想メモリ(Memory Extension)機能は10GBのためだけに6GBで固定されており、OFFにできません。
何故かAndroid 14(AOSP)で不評なインターネットタイルのままで、Wi-Fi用のタイルは実装されていません。
ダークモードにするとAUMI OSの表記は黒なので消えてしまう他、Wi-Fi接続時の入力等で文字が見えなくなる始末です。
アプリ履歴(タスク)は一般的なAndroidの横配置の他に、中華系Androidのように上下に並べることもできるようです。(だから何だという話ですが)
中途半端にAOSPからカスタムされたようなAndroid OSと言った印象で、OS体験は正直微妙…それっぽく見せるためにAOSP比で余計な重さがあり、これならAOSPに近いAndroidをそのまま搭載している方がマシだと感じました。
OSは微妙なものの、半分怪しいと思っていたWi-Fi 6への対応は問題無かったです。(遅いですが)顔認証も使えます。GPSは非搭載です。
ディスプレイ
C107は10.1インチ・1280×800(WXGA)解像度で、60Hzの液晶ディスプレイを採用しています。指紋や反射が目立ちやすいです。
タッチサンプリングレートとSoC性能どちらも低いためタップ反応は悪く、FHD未満の解像度なので色々と必要最低限です。
数少ない本機の良い部分としてWidevine セキュリティレベル L1に対応。動画ストリーミングサービスで高画質な再生が可能です。
せっかく10.1インチでL1対応なのに、FHDディスプレイでは無いのが勿体ないです。せめて8インチ台ならWXGAも我慢できるのですが…。
充電
C107はUSB PD含めた急速充電に非対応で、10Wまでしか対応していません。せめてType-C Current 3A(15W)対応だとマシなのですが…。
安いから仕方ないと言えばそれまでですが、5000mAhクラスのバッテリーを10Wで充電した場合0→100%だと大体2~3時間は掛かるため、極めて遅く時間の無駄です。
オーディオ
C107は特にこれと言ったオーディオ関連の機能は無いです。スクリーンショット音も素の状態では消せません。
いつも通りNeutron Music Playerを使って、再生可能な周波数などを確認。今どき珍しい48000Hz固定で、他の周波数には対応していません。
C107:Hi-Res Audio&アナログ出力テスト | ||
再生可能周波数 | Speaker:48000Hz固定 Line-out:48000Hz固定 | |
アナログ出力 | 可能(3.5mmステレオミニジャック対応) |
LDACやaptX HDコーデックには対応しているので、Bluetoothでの外部出力ならハイレゾ再生可能ではあります…。
C107は一応…ステレオです。ただ、横画面状態で2基のスピーカーが下側に来るタイプの、なんちゃってステレオスピーカーなので横画面使用時限定です。
モノラルスピーカーのiPlay 50 mini Pro(NFE)よりは(ステレオ感)広がりがマシ…程度で、価格なりの音質です。
ベンチマークテスト
ミドルハイ・ハイエンド向けのベンチマーク内容とは別で、Snapdragon 8 Gen 1以下のローエンド~ミドルレンジ帯は軽量的な”lite版”のレギュレーションでテストします。(Redmi 12 5G辺りの記事内容をベースに、軽くリフレッシュしたもの)
りとらいん:ベンチマークレギュレーション Ver.1.0(lite) | |
CPU性能 | Geekbench 6(リネーム版) 電力効率曲線 |
GPU性能 | 3DMark Wild Life Extreme(リネーム版) 電力効率曲線 |
ストレージ メモリ性能 | CPDT Benchmark |
簡易AIテスト | RealSR-NCNN-Android |
ゲーム性能 | 原神/スメールシティ 夜蘭C1ランニングテスト/15分間 |
崩壊:スターレイル/仙舟「羅浮」 星槎海中枢ランニングテスト/15分間 | |
この記事での比較端末と構成のデータ | |
【C107】 ・OS:Android 14(863C_C107_20240509) ・SoC:Allwinner A523 ・メモリ:10(4+6)GB ・ストレージ:128GB ・動作:モード指定無し | |
【Redmi 12 5G】 ・OS:Android 14(MIUI 14:14.0.5.0 TMWJPKD) ・SoC:Snapdragon 4 Gen 2 ・メモリ:4GB(LPDDR4X) ・ストレージ:128GB(UFS 2.2) ・動作:モード指定無し | |
【Redmi Note 9S】 ・OS:Android 13(PixelExperience Plus:13.0-20231123-2215) ・SoC:Snapdragon 720G ・メモリ:4GB(LPDDR4X) ・ストレージ:64GB(UFS 2.1) ・動作:モード指定無し | |
【OPPO Reno7 A】 ・OS:Android 12(ColorOS 12:A201OP_11_C.27) ・SoC:Snapdragon 695 ・メモリ:6GB(LPDDR4X) ・ストレージ:128GB(UFS 2.2) ・動作:高パフォーマンスモード (ColorOS) | |
【iPlay 50 mini Pro NFE】 ・OS:Android 13(EN_20240520) ・SoC:Helio G99 ・メモリ:8GB(LPDDR4X) ・ストレージ:256GB(UFS 2.2) ・動作:モード指定無し | |
【moto g24】 ・OS:Android 14(UTA34.82-51) ・SoC:Helio G85 ・メモリ:8GB(LPDDR4X) ・ストレージ:128GB(eMMC 5.1) ・動作:モード指定無し | |
備考 | ・リフレッシュレート:120Hz(60/90Hz) ・ディスプレイ輝度:各端末での50%固定 ・通信環境:Wi-Fi 5(5GHz接続)&機内モード |
消費電力や温度、動作周波数などの詳細な測定には、Scene 7(TOOLBOX-SCENE)のadb/rootモードを利用。
加えてベンチマーク時だけ性能を発揮しやすくし、スコアを良く見せてゲーム等では性能を意図的に落とす、所謂”ベンチマークブースト”対策にApkRenamerでアプリパッケージ名をリネームしたものを共通で採用しています。
いつも通りであれば、消費電力の測定と電力効率に触れるのですが…。
C107はソフトウェア側のバグなのか、ハードウェア的に問題があるのか分かりませんが…Scene 7での電力測定がバグっており、加えて22nmと枯れたプロセスノードのAllwinner A523なので、今回は電力測定等をやってません。
Geekbench
Geekbench 6(パッケージリネーム版) | |
C107 (Allwinner A523) | |
シングルコアスコア:218 マルチコアスコア:812 最大消費電力:? |
CPU性能を計測するGeekbench 6の結果です。C107を含めた各端末(SoC)のシングル・マルチコア性能を、リネーム版で比較したグラフは以下の通り。
C107含め、TECLAST P30/85TやiPlay50 Mini Liteが採用した「Allwinner A523」は、高効率向けのCortex-A55のみで構成される8コアCPUなので、マルチコア・シングルコア共にローエンドの中でも最底辺の性能です。8コア集まってもSnapdragon 695や4 Gen 2の単コアにすら勝てません。
Allwinner A523に近い性能のSoCとしては、同じく安価帯の端末で採用されていたUnisoc SC9863A、6年前のミドル向けSoCのKirin 659やHelio P22辺りが相当します。MT8168などのMT系クアッドコアよりはマシに動きますが、普段使いやブラウジングすらA523だと厳しいです。
3DMark
3DMark Wild Life Extreme(パッケージリネーム版) | |
C107 (Allwinner A523) | |
Overall score:120 最大消費電力:? |
GPU性能を計測する3DMark Wild Life Extremeで、C107(Allwinner A523)はスコア120でした。
Snapdragon 695やHelio G99の大体1/3程度のGPU性能、化石SoCのHelio G85未満でAllwinner A523のゲーム性能は皆無に等しいです。
が、1万円台の端末向けSoCと言える存在なので、Snapdragon 4 Gen 2のように酷い存在だとはそんなに思わないです。
CPDT Benchmark
CPDT Benchmarkでストレージ・メモリ性能をテスト。テストのファイルサイズは1GB、BufferingやCacheはOFFの標準設定です。
CPDT Benchmark | |
C107 (詳細データ不明) | |
Sequential write:95.19MB/s Sequential read:185.46MB/s Random write:9.34MB/s Random read:25.92MB/s Memory copy:1.64GB/s |
C107のストレージ性能はランダムリードが速いものの、全体的に遅く、SDカードやUSBメモリくらいの速度です。十中八九、eMMCだと思います。
メモリコピー速度は今まで測定した中で2番目に遅いです(最低はUATTAB001の1.05GB/s)。多分、採用規格はLPDDR4か3辺りだと思います。
C107の物理メモリは4GBで、OFFにできない仮想メモリ機能によって、低速なストレージから6GB分を強制的に間借りしています。
正直…eMMC相当のストレージに、メモリの役割を強制的に押し付けて”RAM:10G”と記載するのはちょっと…と思ってます。(4+6)が妥当です。
RealSR-NCNN-Android
簡単なAI性能テストとして、機械学習(AI)を用いた画像のアップスケーリングをテストします。
Real-ESRGANベースの”RealSR-NCNN-Android-GUI”で、1080×1920(FHD)の画像1枚をモデル”real-esrganv3-anime”でGPUを使って処理させ、アップスケーリング後にResultで確認可能な合計処理時間(秒)で比較。
RealSR-NCNN-Android:アップスケーリングテスト | |
C107 (Allwinner A523) | |
real-esrganv3-anime-x2(GPU):121.374 real-esrganv3-anime-x4(GPU):186.844 |
Helio G85やSnapdragon 4 Gen 2よりもGPU性能が低いため、Allwinner A523はFHD→4Kへのアップスケーリング1枚ですら…2分弱掛かります。
ゲーム性能
Allwinner A523に3Dゲームは無理です。ベンチマーク結果の時点で動作させなくても察せられますし、やる意味はほぼ無いです。
が…同じ考えの人が多いのか、Allwinner A523で原神やスタレのデータ測定をした情報を見たことが無い&(私は)いつも通りやるつもりでいたので、どのくらい駄目なのか確認しました。試しにタブ表示で入れてみたので、それぞれ好きに確認して下さい。
- 原神:ランニングテスト
- 比較グラフ
- 崩壊:スターレイル:ランニングテスト
- 比較グラフ
まぁ…想像通りと言った感想です。ただし想像していた&ベンチマーク結果ほどHelio G85と差が無いのは予想外で、ローエンドにとって重すぎる3Dタイトルだと、GPUベンチマークで見た差はどうでもいいくらい動かないのかもしれません。
スタレなんかは最低画質にしても15fps前後、原神はCPUとストレージの処理が追いつかず、特定の場所にいるべきNPCやオブジェクトの配置が間に合わなかったりと…ある意味、普段体験できないゲーム体験が可能です。
「Wacky Warper」みたいな2D、昔のレトロ・シンプルゲー辺りは何とか遊べる程度には動きます。(快適とは言えないですが…)
まとめ:時代にそぐわないかわりに安価
良い | 悪い |
・Widevine L1/Wi-Fi6対応 ・定価約1.4万円、クーポン込で約1万円と安価(ではある) | ・中途半端にカスタムされたAndroid OS、仮想メモリ強制 ・1万円台に抑えるために、あらゆる部分が価格相応 ・22nmのSoC+5000mAhでバッテリー持ちが微妙 |
C107は全体的に昔のAndroidタブレットのような印象で、時代にそぐわないかわりに1万円台と低価格です。(ほぼ安いだけの存在)
動画視聴やSDカードに入れたデータの閲覧用途専用で、事前のやり取りで担当者サンから「C107は、映画鑑賞やシンプルなゲームなど日常の娯楽活動を楽しむユーザーをターゲットにしています」と聞いていたので、その通りでしかない、他のA523採用機と同様の割り切り端末です。
HiGraceは今後ブランド路線を目指し、頑張るそうです。今のところ…リネームテクノロジーしか無いHiGraceがどうするのか注目です。
高品質(High Quality)・優美(Graceful)から取って”HiGrace”、テクノロジーや優れたタブレット体験を提供するブランドとしている以上、Allwinner A523のタブレットをこねくりまわした1万円台の路線から脱却し、Helio G99やT618等の使えるタブレットを展開して欲しいですね。
コメント
ゲームでの実性能がHelio G85とそこまで差が無いのは驚きでした
老眼の人の動画視聴には使えるかも、と思いましたが老眼の人ではそもそも画面が小さいと感じそうだし、ニーズがあるのでしょうか…
とにかく安く買える以外、メリット・強みの部分は無いです。
今回、私含めてかなりの所に配ってPR・宣伝してもらったみたいですが、正直…C107で使う1万円を2倍にするだけで、FHDでG99の端末買えるので…。