2023/7にグローバル投入された割に、かなり影の薄いOnePlus Nord 3 5Gを手に入れたのでレビューします。
スペック・仕様
OnePlus Nord 3 5G(CPH2493) | |
OS | OxygenOS 13.1(Android 13ベース) |
SoC | Dimensity 9000(TSMC 4nm N4) |
メモリ | 8/16GB(LPDDR5X) |
ストレージ | 128/256GB(UFS 3.1) |
ディスプレイ | 6.74インチ Super Fluid AMOLED (1240×2772/40~120Hz:adaptive dynamic/AGC DT-Star2) |
サイズ | 162.6×75.1×8.1mm |
重さ | 193.5g |
バッテリー | 5000mAh(2500mAh×2 デュアルセル構成:80W SUPERVOOC) |
カメラ | 50MP(メイン:Sony IMX890 1/1.56型+OIS) 8MP(超広角:Sony IMX355 1/2.8型) 2MP(マクロ:GalaxyCore GC02M1 1/5型) 16MP(フロント:Samsung S5K3P9 1/3.1型) |
インターフェース | USB Type-C(USB 2.0) nanoSIM×2 |
オーディオ | ステレオスピーカー(アンプ:tfa98xx) Dolby Atmos Hi-Res Audio(192000Hz) |
接続規格 | Wi-Fi 6E(802.11a/b/g/n/ac/ax:2.4/5/6GHz) Bluetooth 5.3 NFC |
防水・防塵 | IP54(?) |
セキュリティ | 画面内指紋認証/顔認証 |
備考 | ・OnePlus Ace 2Vのグローバル版≒OnePlus Nord 3 5G ・Ace 2V(Omnivision OV64B)→Nord 3 5G(Sony IMX890) ・PHP110=OnePlus Ace 2V ・CPH2491(インド版)/CPH2493(欧州版)=OnePlus Nord 3 5G |
開封・外観
前から「Dimensityもやってほしい」と言われていて、個人的にもDimensityを試してみたかったので、検証用としてDimensity 9000(OnePlus Nord 3 5G)とDimensity 9200+(K60 Ultra)を用意。
11月の中旬に面倒くさがって&配送が早いというだけで、イオシスのAランク個体を6.7万円で買う暴挙に出たのでほぼ本体のみ。買う気があって待てるならAliExpressのセール(5~6万円程度)を狙うべきです。
前面・背面どちらもフラット形状かつカメラ以外の凹凸が無い、すっきりしたシンプルなデザインです。ミスティグリーンなので、テンペストグレーと違い光沢感のある背面ガラス仕上げです。
ディスプレイ側のカバーガラスには、OPPO端末で採用があるAGC製Dragontrail STAR2、背面側にはGorilla Glass 5を採用しています。
マナーモードへの切り替えが楽なアラートスライダーや、IRブラスター(赤外線ポート)も備えています。
OnePlus Nord 3 5Gの重さは、保護フィルム(ミヤビックス OverLay Brilliant)込みで約195gです。ガラス筐体かつ6.74インチディスプレイの端末ながら200gを切ります。
フィルムには前述の透過率90%かつ高光沢タイプのOverLay Brilliant、ケースには(Nord 3 5G購入後に)AliExpressでスキンプリントされたOnePlus Ace 2V向けの黒いラバーケースを買いました。…ほぼテンペストグレー化ですね。薄型でシンプルなデザインが良く、気に入ってしまいました。
ソフト・ハードウェア
OS:Android 13ベースのOxygenOS 13.1
OnePlus Nord 3 5GはAndroid 13ベースのOxygenOS 13.1を採用しています。噂通りほぼColorOS 13です。
ColorOS 12以来1年振りかつ、ColorOSとコードベースで統合された後の”OxygenOS”を冠するOSは初めて使いましたが…まぁ、グローバル版のColorOS(とrealmeUI)を使ったことがあれば、OSに直ぐ適応できると思います。
私的にはカスタマイズされていないと微妙なAOSPや、iOSライクの通知/コントロールパネル分離が強制されるMIUIとHyperOSなんかよりも、コントロールセンターは格段に使いやすく常用しやすい印象。
どこかのOSのように初期ランチャー以外でジェスチャーナビゲーションが使用できなかったり、大多数のAOSP搭載機みたいにジェスチャーバーの非表示ができないとかも無く、少しお節介な部分以外は良好です。
EMUI(P30 Pro)以上にしっくりくるAndroid OSと巡り会えてませんでしたが、OnePlusのBLU可能が継続される限りOxygenOS(+LuckyTool)を次の移住先候補にしても良いかも…。
VoLTE対応
OnePlus Nord 3 5Gの対応バンドは以下の通りです。
5G | SA:n77/78/38/40/41/1/2/3/5/7/8/12/20/25/28 BlockA&BlockB/66 |
NSA:n77/78//38/40/41/1/3/5/7/8/20/28 BlockA&BlockB/66 | |
4G | FDD-LTE:B1/2/3/4/5/7/8/12/17/18/19/20/25/26/28/66/32 |
TDD-LTE:B38/39/40/41 | |
3G | WCDMA:B1/B4/B5/B6/B8/B19 |
2G | GSM:850/900/1800/1900MHz |
対応バンドの少なかったOnePlus Ace 2Vと違い、”B1/3/8/18/19/26”に対応しているため、(一応)自己責任ですが…基本的に日本国内の通信事業者全般で使えると思います。
手持ちのpovo2.0のSIMを入れ、プリセットにpovoのAPNを追加後、問題なく通信&VoLTEが有効化されました。細工をしなくてもVoLTEコール”ON”で普通にVoLTEが使えます。
我が家の周辺は4G電波すら弱くなる過疎地ですが…街中へ出掛けた際にたまたま、auのなんちゃって5G回線を拾って通信できました。ミリ波には敵いませんが、MediaTek M80モデム+転用5Gでもそこそこ速いです。
ディスプレイ:1.5K解像度で高精細かつフラット
OnePlus Nord 3 5Gは、6.74インチで1.5K(1240×2772)解像度のフラットな有機ELディスプレイを採用しています。サブピクセルはダイヤモンドピクセル配列です。
1.5K解像度+10bitで高精細かつ発色もかなり鮮やか、輝度はピーク時1450nitで最近の2000nit超えなハイエンドと比べると劣るものの、必要十分な明るさで屋外でも見やすかったです。
WekiHome=サンの分解動画だとベースのOnePlus Ace 2VはTianma T7+発光材が使用されているらしく、Redmi Note 12 TurboやOnePlus Ace 2、realme GT Neo5などのディスプレイに定評のあるモデルと同じ発光材です。
加えてOnePlus Ace 2Vではプラスチックブラケットを排除することで、ハイエンドモデルのような細くスタイリッシュなスリムベゼル化がされており、Nord 3 5Gもこれに準ずる高品質なディスプレイです。
最大120Hz駆動のadaptive dynamic(120Hz/90Hz/60Hz/45Hz/40Hz)対応、タッチレスポンスレートは公称値で1000Hz、アスペクト比は20.1:9、PPIは449でHDR10(+)とHLGに対応しています。
最大120Hzかつ40~120Hzの可変とだけ見れば中々ですが、アプリ別に設定する機能がNord 3 5Gは使えないようで、自動選択だと”設定”は90Hzなのに、滑らかに表示して欲しい”ブラウザ”などは60Hz…みたいな動作です。
ゴニョゴニョする気がそんなに無いので、普段はLuckyToolで90Hzの固定駆動を強制して使ってます。
ディスプレイの色彩設定などはそれなりです。
”Touch Sample Rate Tester”でのタッチサンプリングレート計測では、通常時にInput Event Invoke Rate 120Hz・Movement Rate 123Hz。
ゲームエンジン+タッチ最適化有効時に、Input Event Invoke Rate 124Hz・Movement Rate 370Hz程度でした。
OnePlus Nord 3 5GのWidevine セキュリティレベルはL1で、prime videoなどの動画ストリーミングサービスで高画質な再生が可能です。
生体認証:快適
OnePlus Nord 3 5Gは画面内指紋認証とインカメラを利用した顔認証に対応しています。
認証精度・速度どちらもスムーズで生体認証に不満は無いです。
充電:80W SUPERVOOC&USB PD対応だが…
OnePlus Nord 3 5Gは最大で80W出力が可能なSUPERVOOCに対応しています。
一加 SUPERVOOC 100W 双口超级闪充充电器でOnePlus Nord 3 5Gを充電したところ、SUPERVOOCで急速充電されていました。
26V6Aまで計測可能な”YK003C(AVHzY C3)”とSHZUKU TOOLBOXを使って簡易計測したところ、OnePlus Nord 3 5Gをバッテリー残量5%から95%までSUPERVOOCで充電した場合、所要時間は27分程度でした。
最大値はVBUS:9.1454V、IBUS:6.8087A、PBUS:59.9490Wで、バッテリー80~90%付近でも2~30W程度出力されていました。Xiaomi Hyper Charge 120W程では無いですが、十二分に高速な充電速度です。
SUPERVOOC以外の汎用的なUSB PDでの充電をテスト。最大21V3AのUSB PD(PPS)に対応する”UGREEN DigiNest Cube 65W”で充電したところ、USB PD(Fixed)9V2Aのネゴシエーションがされました。
OnePlus Nord 3 5Gをバッテリー残量5%から95%までUSB PD(Fixed)9V2Aで充電した場合、所要時間は約1時間30分程度でした。SUPERVOOCだと30分未満で済む充電時間がUSB PDだと倍以上…。
最大値はVBUS:9.0494V、IBUS:1.9764A、PBUS:17.6497WでPD 18Wによる充電ですが…バッテリー50%前後で、5V2A=10W前後に低下するので1時間30分も掛かってしまったようです。半分以上は10Wなので遅いです。
OnePlus Nord 3 5Gは、汎用的なUSB PDだと微妙な速度しか出ません。VOOC系の出力に対応したACアダプターが快適に利用する上ではほぼ必須です。
独自規格以外だと1時間半も掛かる点は微妙で、せめてPD25W程度に対応していても良かったと思います。
オーディオ
サウンド効果
OnePlus Nord 3 5GはDolby Atmosに対応しています。本体スピーカーではOFFにできず、Dolby Atmos ON特有の僅かな遅延があります。
ハードウェア
独自エンジン採用の音楽プレイヤー”Neutron Music Player”で、OnePlus Nord 3 5Gの再生可能な周波数を確認します。
デフォルト設定では、スピーカー・Line-out(イヤホン)出力どちらも44100Hz(16bit)でした。
周波数は固定されておらず、ドライバーの設定にも”Hi-Res系の出力を許可”する項目がなく、周波数設定から44100/48000/96000/192000Hzに任意で出力変更が可能でした。
192000Hzに再生周波数を変更し、ネイティブ192KHz(24bit)のWav音源を再生して”なんちゃってハイレゾ対応”では無いことを確認すると、ゲイン80の状態でもノイズや出力低下は発生せずにしっかり再生できました。
アナログ型のUSB Type-C to 3.5mm変換アダプターをそのまま使えたため、OnePlus Nord 3 5Gはアナログ出力可能なスマートフォンです。
スピーカーのアンプには”tfa98xx”を採用…98から後ろがxxなので、具体的な型番までは見つけられてません。
スピーカーの音質は可もなく不可もなく普通です。
樹脂筐体+aw882xx-SmartPAでコストカットされ、シャカシャカした音質のRedmi Note 12 Turboよりは良く、Pixel 6程度には低域も出てDolby Atmosのおかげで音の広がりもまぁまぁですが、CS35L41採用で左右のバランスも良かったPOCO F3などと比べると少し見劣りする印象です。
音質 | 端末・オーディオエフェクト |
とても良い | POCO F4 GT(K50G)/Dolby Atmos |
良い | Google Pixel 8 Pro/non Xiaomi Mi 11i(K40 Pro+)/Dolby Atmos POCO F3(K40)/Dolby Atmos Redmi K60 Pro/Dolby Atmos realme x2 Pro/Dolby Atmos |
普通 | OnePlus Nord 3 5G/Dolby Atmos Google Pixel 6/non LG V60 ThinQ 5G/DTS:X&LG 3D Sound Google Pixel 3/non ZTE Axon 10 Pro 5G/DTS:X Ultra |
悪い | Redmi Note 12 Turbo(F5)/Dolby Atmos |
Bluetoothコーデック
”Bluetooth Codec Changer”で、OnePlus Nord 3 5G側がサポートしているコーデックを確認すると、LDAC/apt X(HD)/LHDC/AAC/SBCに対応していました。
LHDCは中国版のOnePlus Ace 2Vの仕様に「※LHDCはOPPO Enco XシリーズおよびOnePlus Buds Proシリーズのヘッドフォンで使用する必要があります」と記載があるため、利用に制限があると思われます。
Dimensity 9000について(スペック・仕様)
ベンチマークや電力効率測定の前に、いつも通り採用したSoCの簡易解説とかを先にします。
比較表には同世代にして最大の好敵手であるSnapdragon 8 Gen 1、一部のオタク以外には空気と言っても良い存在ですが…一応スペックが近いのでExynos 2200も入れました。
SoCスペック・比較/構成解説表(仮) | |||
SoC | Dimensity 9000 | Snapdragon 8 Gen 1 | Exynos 2200 |
プロセスノード | TSMC 4nm (N4) | Samsung 4nm (4LPX) | Samsung 4nm (4LPE) |
CPU | 8C8T | 8C8T | 8C8T |
X2×1:3.05GHz A710×3:2.85GHz A510×4:1.8GHz | X2×1:3GHz A710×3:2.5GHz A510×4:1.8GHz | X2×1:2.8GHz A710×3:2.5GHz A510×4:1.8GHz | |
L3キャッシュ | 8MB (SLC:6MB) | 6MB (SLC:4MB) | 4MB (SLC:8MB) |
GPU | Mali-G710 MC10 (848MHz) | Adreno 730 (818MHz) | Xclipse 920 (1306MHz) RDNA2:6CU |
NPU(DSP) | APU 590 | Hexagon | Dual-core NPU |
ISP | Imagiq 790 (Triple 18bit) | Spectra (Triple 18bit) | ? |
メモリ | LPDDR5X (3750MHz) LPDDR5 (3200MHz) | LPDDR5 (3200MHz) | LPDDR5 (3200MHz) |
ストレージ | UFS 3.1 | UFS 3.1 | UFS 3.1 |
通信モデム | MediaTek M80 | Snapdragon X65 5G | Exynos Modem |
接続規格 | Wi-Fi 6E Bluetooth 5.3 | Wi-Fi 6E Bluetooth 5.2 | ? |
内部コード | MT6983 | SM8450 | S5E9925 |
Dimensity 9000は2022年の旗艦向けに2021/11/19に発表され、プロセスノードにTSMC 4nm(N4)を世界で初めて採用し、Arm v9アーキテクチャーを他社に先駆け採用したMediaTekのSoCです。
CPUはプライマリコアにCortex-X2(3.05GHz)を1基、高性能コアにA710(2.85GHz)を3基、高効率コアにA510(1.8GHz)を4基採用した、スタンダードな1+3+4の8コア8スレッド構成。
カタログ時点でSnapdragon 8 Gen 1やExynos 2200を上回るCPUスペックを備え、GPUにMali-G78の後継であるMali-G710 MC10(848MHz)を搭載。1基辺り2コアなので実際のユニット数は20基(10×2)です。
メモリはLPDDR5(3200MHz)までのSnapdragon 8 Gen 1やExynos 2200と違い、Dimensity 9000は最大でLPDDR5X(3750MHz)をサポート。ストレージは共通でUFS 3.1に対応。
ISPは従来のMediaTek製品から大幅強化され、Triple 18bitで3億2000万画素やトリプルカメラに対応し、世界初の8K AV1デコードにも対応したImagiq 790、NPU(DSP)に前世代から4倍の向上を謳うAPU 590を搭載。
今見ても見劣りしないスペックで、当時はQualcommがSnapdragon 8 Gen 1で盛大にコケたため、TSMC製かつSnapdragonと競合できる存在で何処かの”9000”を彷彿させ、かなり注目されていたと記憶しています。
Dimensity 1000系でMediaTekはハイエンド帯に復帰したものの、Dimensity 1200や1000はそれぞれSnapdragon 870や855+と競合する存在で、Snapdragon 888や865と直接対決する存在ではありませんでした。
2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |
Qualcomm | Snapdragon 855 | Snapdragon 865 | Snapdragon 888 | Snapdragon 8 Gen 1 |
MediaTek | – | Dimensity 1000 | Dimensity 1200 | Dimensity 9000 |
Huawei (HiSilicon) | Kirin 980 | Kirin 990 | Kirin 9000 | – |
Samsung | Exynos 9820 | Exynos 990 | Exynos 2100 | Exynos 2200 |
Dimensity 9000は発表当時”世界初”となる部分が多く、またMediaTekにとってQualcomm Snapdragonと同じ世代におけるハイエンド帯で、直接対決の幕開けとなったある意味で記念すべきSoCです。
(日本だと搭載機種がOPPO Pad 2しかなく、一部の端末でレビューはあるもののベンチマークかカメラ性能にフォーカスした情報が多い印象で、私が好きだったり面白いと感じるSoCそのものの情報が少ないので、今更かつ簡易的ながら上記の内容を書いておきます。)
ベンチマークテスト
テスト端末・環境構成 | |
端末 | OnePlus Nord 3 5G Redmi Note 12 Turbo POCO F4 GT※¹ Xiaomi Mi 11i※¹ Pixel 8 Pro※¹ |
OS | Android 13(OxygenOS 13.1 CPH2493_13.1.0.581 EX01) Android 13(Xiaomi.eu 14) Android 13(Xiaomi.eu 14) Android 13(crDroid v9.9) Android 14(UD1A.230803.041) |
SoC | Dimensity 9000 Snapdragon 7+ Gen 2 Snapdragon 8 Gen 1 Snapdragon 888 Tensor G3 |
メモリ | 16GB(LPDDR5X) 8GB(LPDDR5X) 8GB(LPDDR5) 8GB(LPDDR5) 12GB(LPDDR5X) |
ストレージ | 256GB(UFS 3.1) 256GB(UFS 3.1) 128GB(UFS 3.1) 128GB(UFS 3.1) 256GB(UFS 3.1) |
備考 | 動作・制御:CPU/GPU定格動作(パフォーマンスモードON) ディスプレイ駆動:120Hz固定 ディスプレイ輝度:各端末での50%固定 通信環境:Wi-Fi5(5GHz接続) 室温:18℃ ※¹(Pixel 8 Proのレビュー記事内で使用したデータを流用) |
Snapdragon 8 Gen 1とDimensity 9000の対決、またSnapdragon 7+ Gen 2のRedmi Note 12 Turbo(POCO F5)とOnePlus Ace 2V(Nord 3 5G)の戦いを個人的に望んでいたので、明確な比較対象にこの2つを用います。
あとはいつも通りかませ犬としてSnapdragon 888(Mi 11i)、ベンチマーク上はDimensity 9000と同等以上なTensor G3(Pixel 8 Pro)の計測データを流用して比較。ただ…Tensor G3は参考程度です。
消費電力やフレームレートを測定するツールにはScene(TOOLBOX-SCENE)を利用。OnePlus Nord 3 5Gはデュアルセル構成のバッテリーを採用しているので”double cell”で計測しています。
Geekbench
CPU性能を計測するGeekbench 6では、通常版(6.2.0)でシングルスコア1635・マルチスコア4501、AndroPlus=サンがパッケージ名を変更したベンチマークブースト対策版(6.1.0)では1629・4455でした。
パッケージ名を変更してもスコアの大幅な低下は見受けられず、Geekbench 6でのベンチマークブースト行為をOnePlus Nord 3 5Gはしていないと思われます。
マルチ性能はカタログスペック通り、Cortex-X2・Cortex-A710の動作クロックが高いためDimensity 9000がSnapdragon 8 Gen 1を明確に上回ります。Cortex-X3やA715を採用のTensor G3にも引けを取りません。
一方シングル性能はSnapdragon 8 Gen 1(3GHz)と0.05GHz、7+ Gen 2(2.92GHz)と0.13GHz程度差があり、Dimensity 9000が2つを上回ると思っていましたが…私の計測ではほんの少しだけ劣る結果になりました。
OnePlusはBLU等に寛容でOnePlus Nord 3 5Gをroot化(Magisk導入)したので、いつも通りCPU動作クロックを大/中/小に区分けした”電力効率区分”を計測、Dimensity 9000でもグラフを作成します。
(日常的な動作に近づける中クロックはなるべく高クロックの半分に近い値、低クロックは最低周波数を採用していますが、周波数テーブルに丁度半分の値が無いので以下の値で計測してます。)
各SoCの区分けした動作クロックのマルチコアスコアと消費電力、ワットパフォーマンス(スコア÷消費電力)は以下のグラフの通りです。
Dimensity 9000のピーク時における電力効率は、Snapdragon 8 Gen 1を明確に上回ります。中周波数でも動作クロックの割に約4W程度で、マルチスコア2200を超えるのでこちらも良好。
最低周波数同士だと消費電力はどちらも2.6W程度ながらA710×3のクロックが高い影響か、Snapdragon 8 Gen 1が少し高いスコアを記録したので、効率スコアは423と450.7で8 Gen 1が優勢。とはいえ大差は無いですが…。
Dimensity 9000 vs Snapdragon 8 Gen 1のCPUでの電力効率では、同じコア構成でもTSMC N4で製造されたDimensity 9000の勝利で、言ってみればSamsung 4nm vs TSMC 4nmでのTSMCの勝利とも言えます。
まぁ…敢えて強く触れませんが、Dimensity 9000すらSnapdragon 8+ Gen 1を起源とし、同じアーキテクチャーかつTSMC N4で製造されたSnapdragon 7+ Gen 2に8 Gen 1共々粉砕されてます。(9W以下でD9000と同等…)
かませ犬のTensor G3とSnapdragon 888は息をしていません。TSMCで製造したCPUが電力効率では正義です。
3DMark
3840×2160の解像度でVulkan APIを用いてGPU性能を計測するベンチマーク、3DMark(Wild Life Extreme)のベンチマークブースト対策版で、OnePlus Nord 3 5G(Dimensity 9000)はスコア2389でした。
今回のデータ比較ではDimensity 9000(Mali-G710 MC10)は2番手です。端末の調整次第では3番手のSnapdragon 8 Gen 1(Adreno 730)が優位に立つ場合もあります。前から感じてましたが…POCO F4 GTは微妙です。
肝心のDimensity 9000(Mali-G710 MC10)のWild Life Extreme実行時の消費電力は、7.5WでTensor G3(Mali-G715 MP7)やSnapdragon 8 Gen 1(Adreno 730)より低いです。
GPUのワットパフォーマンスもCPUに似た傾向で、絶対性能では新しい世代のTensor G3や性能寄りのSnapdragon 8 Gen 1端末に負けると思いますが、電力効率はDimensity 9000が優れています。
ArmのMali GPUはATI(AMD)→Qualcommなどを経た、歴の長いAdreno GPUにあと一歩…なイメージが昔はありましたが、ここ数年の製品(特にDimensity)はAdrenoとも戦えている印象です。(…日本のソシャゲ以外は)
…Snapdragon 7+ Gen 2(Redmi Note 12 Turbo)入れなきゃ良かったかなって少し思ってるのは内緒です。
PCMark for Android
Webブラウジングや写真・動画編集、データ操作といった一般的なタスクでの性能を計測する、PCMark for Android(work 3.0)のベンチマークブースト対策版で、OnePlus Nord 3 5Gはスコア13288でした。
PCMark自体がスコア差を競うためのベンチマークではないので、高ければ何でも良い訳ではないです。
どのSoCも、ある程度普段使いでストレス無く使用可能なスコア8~9000前後を超え、快適と言えるスコア10000以上なので普段使いは問題ないです。
mozilla kraken 1.1
シングルスレッド性能の差が反映されやすく、ブラウザ上で動作するベンチマーク”mozilla kraken 1.1”でWebブラウザの処理速度をテストします。単位はミリ秒(ms)で1000msを下回っていれば実用的な結果です。
OnePlus Nord 3 5G(Dimensity 9000)の合計処理時間は916.8msで、重たいWebページでも単純計算だと約0.9秒で処理が可能。
シングルコア性能も大差ないのでSnapdragon 8 Gen 1並の速度を記録するかと思っていましたが、何故か性能の割にOnePlus Nord 3 5G(Dimensity 9000)がワーストの結果に。
まぁ…mozilla krakenはちょっとバラつきのあるブラウザベンチマークで、シングル性能の調子が良い・悪い場合で結構変わりますし、どのSoCも1000msを下回っているので、webブラウジングで実用上は無問題です。
実際はベンチ上の数値よりも体感での動作は良く、手持ちのSnapdragon 888や870機よりサクサクでSnapdragon 7+ Gen 2と快適度合いは遜色ないです。ベンチはベンチで以上でも以下でもねぇのですよ。
CPDT Benchmark
クロスプラットフォーム対応のCPDT Benchmarkで、モバイル端末でも非常に重要なストレージ・メモリ速度を計測します。テストのファイルサイズは1GB、BufferingやCacheはOFFの標準設定です。
OnePlus Nord 3 5G(LPDDR5X/UFS 3.1)は、シーケンシャルでライト約767MB/s・リード約729MB/s、ランダムでライト36.6MB/s・リード16.59MB/s、メモリコピーでは14.46GB/sでした。
シーケンシャルライトは750MB/s超えでUFS 3.1にしてはかなり高速な結果ですが、シーケンシャルリードはあまり速く無いです。書き込み性能を重視した調整がされている…という印象です。
ランダムアクセス性能もシーケンシャルに似た傾向で、ランダムライトはUFS 3.1ではそこそこ高速と言える方ですがリードは普通です。
余談として4~5月頃のNote 12 Turboランダムリード激遅問題は恐らくですが、当時のMIUIが原因だったようで、euROM(14.025.0)クリーンインストール後は10~15MB/s程度は普通に出るようになりました。
採用メモリ自体はLPDDR5Xなものの、SoC側がLPDDR5止まりなので速度を活かせないSnapdragon 7+ Gen 2よりは高速ですが、LPDDR5X採用かつ帯域を活用できるDimensity 9000機にしては平凡です。
MLPerf Mobile Inference benchmark
業界標準団体”MLCommons”が公開している機械学習性能のオープンソースベンチマーク、MLPerfのモバイル版”MLPerf Mobile Inference benchmark v3.0”で、機械学習(AI)性能をテストします。
画像分類・物体検出・画像セグメンテーション・言語理解・超解像・オフラインでの画像分類の6つを約30分間掛けて実行する長いベンチマークです。Snapdragon 7+ Gen 2やDimensity 9000もサポートされてます。
テスト項目と結果の桁が多いので、OnePlus Nord 3 5G(Dimensity 9000)の結果も含めたグラフを分割します。
Dimensity 9000のMLPerf(v3.0)における、画像分類(Image Classification)・物体検出(Object Detection)・画像セグメンテーション V2.0(Image Segmentation)3つの結果は、数値上だとTensor G3と拮抗する程度です。
上3つと言語理解(Languge Understanding)の結果だと、(実行アクセラレーションやライブラリの関係で)完全には単純比較できないものの、Snapdragon 888以上のAI性能だというのは何だかなぁって結果ですが…超解像(Super Resolution)とオフラインでの画像分類(Image Classification offline)は他のSoCを上回ります。
特にオフラインの画像分類は、Dimensity 9000だけが4500を超えてぶっちぎりってます。…ただ、正直なところを言うとこの結果を良いとも悪いとも判断しかねます。個人的な興味からMLPerfで数値化しただけなので。
最終的にDimensity 9000の機械学習(AI)性能をどのように活用する・できるかは…未知数です。
RealSR-NCNN-Android
機械学習性能を計るベンチマーク結果だけを見ても、差があるのは分かりますが…正直「?」状態です。
いつも通り簡単なAI性能テストとして、機械学習(AI)を用いた画像のアップスケーリングをテストします。
Real-ESRGANをベースにしたシンプルなアプリ”RealSR-NCNN-Android-GUI”を使い、適当にStable Diffusionで生成した、画像1枚をモデル”real-esrganv3-anime”でGPUを使って処理させ、2・4倍へアップスケーリング後にResultで確認できる合計処理時間(秒)で比較します。
1080×1920(FHD)の画像を2160×3840(4K)・4320×7680(8K)に、GPUで処理して2・4倍へアップスケーリングした場合、Dimensity 9000は性能的に同格のTensor G3やSnapdragon 8 Gen 1と互角…ですらなく、最下位です。
2倍アップスケーリングで最速だったTensor G3(Mali-G715 MP7)から8秒、4倍で最速のSnapdragon 8 Gen 1(Adreno 730)から約7秒遅れています。
(Real-ESRGANだけに)リアルに「!?」が出る程度にはビックリする結果です。”RealSR-NCNN-Android”を使ったテストは、GPU性能差が現れる簡易AIテストにしか思ってませんでしたが、どうやらそうでもないらしいです。
Tensor G3の結果を見るにMali GPU系が苦手としているようには見えず、Snapdragon 7+ Gen 2と888が8Kだと逆転していることから単純に新しければ良いとも言えず。…とりあえず、RealSR-NCNN-AndroidでのGPU処理はDimensityが苦手としていて、ただのGPUを使った簡易AIテストではなさそうという一例が得られました。
データが少ないし、RealSR-NCNNをベンチマークで利用している人が居ないので…確証は無いですが。Dimensity 9200+のテスト時に1.9.1へ更新&RealSR-NCNN-Androidに内蔵されたベンチを測定し直しかな…。
CPU・GPUストレステスト
CPU Throttling Test
発揮可能な性能の100%を基準に、発熱による性能低下時のCPU性能や安定性を計測できるストレステスト、CPU Throttling Testを最大負荷の100スレッド、20分間実行して安定性を確認します。
OnePlus Nord 3 5G(Dimensity 9000)のCPU Throttling Testでの安定性は61%でした。OnePlusやrealme系の端末だとスロットリングが強めらしく、OnePlus Nord 3 5Gも恐らくその影響があると思います。
安定性は61%ですが20分後のバッテリー温度は、Snapdragon 8 Gen 1(POCO F4 GT)の46.5℃や888(Mi 11i)の44℃よりも低い41℃でした。性能より発熱面を気にした調整かもしれません。
もちろん、OnePlus Nord 3 5G(Ace 2V)は4129m㎡のVC冷却やグラファイト銅カーボン材を備え、Snapdragon 8 Gen 1や888に比べれば消費電力が少ないDimensity 9000なのも温度が低い要因の1つだと思いますが…。
3DMark Wild Life Extreme Stress Test
ベンチマークブースト対策版の3DMark(Wild Life Extreme Stress Test)でGPU性能の安定性を確認します。
OnePlus Nord 3 5Gは最大スコア2360・最低スコア1622で安定性は68.7%でした。バッテリー温度40℃前後になる11Loopから12Loopの間で性能が落ちています。
最大性能は単発時同様にSnapdragon 8 Gen 1や7+ Gen 2を上回りますが、20Loop後は1622でSnapdragon 888(Adreno 660)に近い位置まで性能が低下しています。GPUもスロットリング強めのようです。
最大バッテリー温度は45℃で、Snapdragon 8 Gen 1よりはマシ…ただし発熱が少ない訳では無いといった印象です。Dimensity 9000は7.5W前後の消費電力なので相応の発熱です。
とはいえ、CPU Throttling Testと3DMarkでのストレステストは使用率99(100)%に張り付いた状態、非現実的な使用下での安定性や持続力を見れるだけなので「酷使したらこんなもんかな」程度のテスト結果です。
ゲーム性能
ベンチマークテストの結果は所詮、最大性能を測定するための存在・簡易指標でしかないです。3Dゲームにおける実行性能は各ゲームごとに計測し、実測したデータからでしか推察できません。
3Dゲームと言っても動作に影響するものが”GPU性能”だけとは限らず、特定のタイトル1つだけ動作させて、性能の良し悪しを判断するのも早計です。(例:〇〇が快適に動く=ゲーム性能が高い…とする等)
計測には引き続きScene6を利用、最低フレームレート1%(=99%Tile)は自動計算されないので、CSVファイルをエクスポートして再計算。”ゲーム”に各タイトル追加・プロゲーマーモードも一応、有効化しています。
勝利の女神:NIKKE
フレームレートによってDPSに差が生じ、フレームレートの安定性が重要となるガンガールRPG「勝利の女神:NIKKE(メガニケ)」での性能テスト。4タイトルの中では中量級で性能要求値は低めです。
コアさえ破壊すれば胴体を撃つだけで良く、最もランダム要素を排除して動作を揃えやすいため、迎撃戦(特殊個体:モダニア)でテストしています。検証なのでモダニアは普通にバースト(残滅モード化)させます。
戦闘狂以外、クイック戦闘で消化すると思うので計測は1回です。逆に1回目の時点で平均50fpsを越えない場合、ストーリーの攻略や日課の消化にすら使い物にならないという目安にもなります。
グラフィック(高)/1080p@60fps 迎撃戦(特殊個体:モダニア) | |
テストタイトルの動作目安、性能の影響について | |
CPU性能寄り+最適化(?) (個人的)推奨:Snapdragon 8 Gen 1以上 | 平均フレームレート:50fps以上 最低フレームレート(1%):45fps以上 |
計測結果 | |
OnePlus Nord 3 5G (Dimensity 9000) | 平均フレームレート:46.6fps 最低フレームレート(1%):35fps |
平均消費電力:5.65W 最大バッテリー温度:29.3℃ |
迎撃戦(特殊個体:モダニア)でのフレームレートは、Snapdragon 8 Gen 1と同格の存在ですが…Dimensity 9000が平均46.6fpsで、Tensor G3をやや上回るものの格下のSnapdragon 888に劣る結果でした。
以前のSnapdragon 870(平均43.5fps)でテストした段階でそれっぽい挙動があり、(当時は)単純にスペック不足だと考えていましたが…メガニケの性能要求値自体はSnapdragon 8 Gen 1クラスながら、それ以上にSoCが最適化されているか次第のようです。
純Arm IP(回路設計データ)ベースとSnapdragon 888以前のSoCは動作が微妙で、もっと言えばAndroidに絞ると「最近のSnapdragonか、それ以外か」な気がしてます。Dimensityと相性が良くない部類です。
ネイティブ60fps(秒間60発)に近いフレームレートが出せないと連射系武器(MG/SMG等)持ちキャラ、特に”モダニア”や”ルドミラ:ウィンターオーナー”のような高火力バーストⅢのDPS(ダメージ量)が低下します。
深追いはしてませんが…LuckyToolでバッテリー温度制御を無効化し、SceneでCPU・GPU動作クロックを上限値に固定化しても大して動作は変わらず。集団戦だと30fps前後で、雑魚処理が間に合わずやられることも。
動作中の消費電力は5.65Wで、8.06WのSnapdragon 8 Gen 1や7.3Wの888より低いため、1フレーム辺りの消費電力(ワットパフォーマンス)は悪くは無いです。OnePlus Nord 3 5Gの最大バッテリー温度も低めです。
原神(Genshin Impact)
Snapdragon 855+RAM6GBクラスに推奨スペックが引き上げられた、スマートフォンではAAA級タイトルな「原神(Genshin Impact)」でのパフォーマンスをテスト。
先にOnePlus Nord 3 5Gのレンダリング解像度が他の端末と乖離していないかを簡易的に調べます。CR²FSと勝手に呼んでる中華圏の鋸歯とは別の方法で確認すると、斜めのジャギーは19段なのでAndroid標準の720pです。
(Android版)原神:レンダリング解像度《渲染分辨率》※参考程度 | |
OnePlus Nord 3 5G | |
実行解像度:1920×859 | CR²FS:19段(レンダリング精度:高) レンダリング解像度:720p(Android標準) |
原神はいつも通り、スメールシティを夜蘭の元素スキルでランニングし続ける”スメールシティ・夜蘭C1ランニング”でテスト。夜蘭(C1)で約4分間のルートを最高画質(720p)+60fps設定で15分間走行して計測。
グラフィック(最高)/720p@60fps スメールシティ/夜蘭C1ランニングテスト/15分間 | |
テストタイトルの動作目安、性能の影響について | |
CPUボトルネック (個人的)推奨:Snapdragon 7+ Gen 2以上 | 平均フレームレート:45fps以上 最低フレームレート(1%):30fps以上 |
計測結果 | |
OnePlus Nord 3 5G (Dimensity 9000) | 平均フレームレート:50.3fps 最低フレームレート(1%):36fps |
平均消費電力:7.04W 最大バッテリー温度:43.6℃ |
原神とDimensityは前々から言われている通り、他のゲームより最適化がされていて平均50.3fps・最低(1%)36fpsでOnePlus Nord 3 5Gの動作は比較的良好です。
CPUボトルネックを顕在化させやすく重いスメールシティでのテストで良好なので、私的に半黒歴史で他の人がよくテストしているスメール(千尋の砂漠)や、フォンテーヌ(地上)ではもう少し平均値が上がります。
フレームレートが平均50fps以上=性能が発揮されたので、スロットリングで性能が低下し、平均46fps程度なSnapdragon 8 Gen 1より消費電力や発熱は少し多めです。ここはどっちが良いか問題な部分…。
崩壊:スターレイル(Honkai:Star Rail)
Snapdragon 855・Dimensity 1000+RAM6GBクラスが推奨スペックながら、原神よりも動作要件の重いAAA級タイトル「崩壊:スターレイル(Honkai:Star Rail)」でのパフォーマンスをテスト。
保留にしていた解像度に関して、中華圏の情報を漁り直してある程度把握したので記事に落とし込みます。「崩坏星穹铁道 渲染分辨率」等で調べれば、bilibiliとか中華圏の情報がいくつかヒットします。
崩壊:スターレイルの場合、ゲーム内の撮影機能から撮影した画像の情報に表記されている解像度=ゲーム実行解像度です。原神はレンダリング精度の倍率が不明なため、鋸歯等の方法でジャギーを数える必要がありますが、スターレイルは中華圏の情報をいくつか見る限り、レンダリング倍率は恐らく最高≒1.0相当。
スクリーンショットから得られる解像度をそのまま実行解像度として利用可能です。中華圏では渲染分辨率だけでなくレンダリングされている総ピクセル数”渲染像素数”も求めているようです。
OnePlus Nord 3 5Gのスターレイル実行解像度は最高画質時、1680×751で総レンダリングピクセル数は126.2万、この値は参考にした中華圏の情報群と中国版OnePlus Ace 2Vの実行解像度と一致しています。
(Android版)崩壊:スターレイル:レンダリングピクセル数《渲染像素数》※参考程度 | |
OnePlus Nord 3 5G | |
実行解像度:1680×751 | 総レンダリングピクセル数:126.2万 |
参考・基本値(1680×756) | |
・Redmi Note 12 Turbo ・Xiaomi 13 Pro ・OPPO Find X6 Pro…等 | 総レンダリングピクセル数:127万 |
テストはいつも通り、GPU負荷の重い仙舟「羅浮」の星槎海中枢をグラフィック(最高)+60fps設定で、一定のルートを時計回りに15分間歩き回りフレームレートを測定。751pと756pでの差は然程影響しません。
グラフィック(最高)/751p@60fps 仙舟「羅浮」(星槎海中枢/15分間) | |
テストタイトルの動作目安、性能の影響について | |
GPUボトルネック (個人的)推奨:Snapdragon 8+ Gen 1以上 | 平均フレームレート:45fps以上 最低フレームレート(1%):30fps以上 |
計測結果 | |
OnePlus Nord 3 5G (Dimensity 9000) | 平均フレームレート:34.2fps 最低フレームレート(1%):24fps |
平均消費電力:6.66W 最大バッテリー温度:44.5℃ |
OnePlus Nord 3 5G(Dimensity 9000)は平均34.2fpsで、負荷が重くGPU性能が影響するスターレイルだとテスト端末中、平均値はワーストの結果になりました。性能の近いTensor G3と拮抗しています。
最低フレームレート(1%)は24fpsで、スロットリングで平均値は低いものの緩やかな制御で、一気に性能が制限されるSnapdragon 8 Gen 1や888よりは安定しています。が…少なくとも画質を下げないと厳しい動作。
スターレイルでのワットパフォーマンスは3番手で、Snapdragon 8 Gen 1よりはマシです。
前に書いた通りTensor G3はGPU部分だけはCPU部分よりマトモで、スターレイルでDimensity 9000とそこそこ戦えても可笑しくないといった印象。よく利用される原神とは性質が違うので結果も違ってきます。
レスレリアーナのアトリエ ~忘れられた錬金術と極夜の解放者~
最後にSnapdragon 835+RAM4GB以上で対応可能とされている、レスレリこと「レスレリアーナのアトリエ ~忘れられた錬金術と極夜の解放者~」をテスト。
レスレリは解像度関連の参考にできる情報が無く、CR²FS同様にそれっぽいものができた(?)ので参考や比較できるように置いておきます。まぁ…解像度レベルでスマホのゲーム性能を見てくれる人は殆どいませんが…。
ゲーム内の撮影機能から得られる情報をいくつかゴニョゴニョしてみると、実行画面解像度の品質別に得られる解像度も変わり、手持ちの端末で幾つか試した限り縦方向の解像度は755/503/377pで同じでした。
横方向は解像度が1.5Kの端末で844~1689、FHDで840~1680なので、横方向が端末の画面解像度に影響される模様。このため解像度や挙動が近い、スターレイル方式(中華圏)でレスレリも比較することにしました。
(Android版)レスレリアーナのアトリエ:レンダリングピクセル数※参考程度 | |
OnePlus Nord 3 5G | |
【実行画面解像度】 最高:1689×755 高:1126×503 標準:844×377 | 総レンダリングピクセル数:127.5万(最高) |
実行画面解像度(参考値:Redmi Note 12 Turbo) | |
最高:1680×755 高:1120×503 標準:840×377 | 総レンダリングピクセル数:126.8万(最高) |
テストには、元々Tensor G3の動作結果からArm系GPUの最適化状況を軽く調べる目的もあったので、引き続き第2章のストーリー回想を採用。慣れた原神やスターレイルと違って、レスレリはまだ仮採用の段階でもあり…。
グラフィック(ベストプリセット)/755p@60fps 第2章「月影の会」”重なる星~極夜に揺れる花”約15分間 | |
テストタイトルの動作目安、性能の影響について | |
極端なGPUボトルネック+最適化 推奨:未定(30fpsならターン制なので一応プレイ可) | 平均フレームレート:30fps以上 最低フレームレート(1%):- |
計測結果 | |
OnePlus Nord 3 5G (Dimensity 9000) | 平均フレームレート:7.3fps 最低フレームレート(1%):6fps |
平均消費電力:5.17W 最大バッテリー温度:41.2℃ |
…OnePlus Nord 3 5G(Dimensity 9000)の結果は平均7.3fpsで、Tensor G3に差を付けられ、ライバルのSnapdragon 8 Gen 1(33.9fps)とは勝負にならず。格下のSnapdragon 888にすら届きません。
メガニケが可愛く感じるレベルで、Arm系GPUは殆ど最適化されていないのか…GPUスペック通りの性能を発揮できません。国産タイトル+日本国内で採用機の少ないDimensityの組み合わせだと微妙な結果です。
プリセットをバランスにしたり、レスレリが無駄に重い原因のアンチエイリアスを落とせば、GPUがボトルネックになるタイトルなので動作改善は多少見込めます。まぁ…D9000以外で良いと言えばそれはそう。
消費電力自体はGPUだけをぶん回すレスレリなので5W前後ですが…1フレーム辺りの消費電力だと平均7.3fpsのDimensity 9000は終わってます。8W超えで約47℃に爆熱化する8 Gen 1のがマシとは言えませんが。
PCでもGeForceとRadeonで有利・不利があるように、Dimensity…というかArm系GPUが特に苦手な分野があっても不思議ではないですが、結果は結果です。
単純にレスレリ(とか国産のソシャゲ)にはSnapdragon(Adreno)が無難で、Dimensityで動作が微妙なタイトルはSnapdragonで遊ぶだけとはいえ、アプリ側がもう少しSoCを上手く使えればな…と。ポテンシャルを活かせるようになるまでレスレリが続いてくれてればの話ですが…。
まとめ:コストパフォーマンスは微妙、物は良く扱いやすい
良い | 悪い |
・両面フラット形状・すっきりしたシンプルなデザイン ・6.74インチサイズで比較的軽量な約195g(200g切り) ・扱いやすいOxygenOS&VoLTE対応 ・定評のあるTianma T7+発光材の120Hz/1.5Kディスプレイ ・スタイリッシュなスリムベゼル ・80W SUPERVOOC対応 ・LPDDR5Xで最大16GB、書き込み重視のUFS 3.1採用 ・Dimensity 9000採用&ブートローダーアンロック可能 ・メインカメラがOV64Bから1/1.56型のIMX890に | ・アプリ別のリフレッシュレート駆動具合が微妙 ・汎用的なUSB PDでの充電は遅い ・ステレオスピーカーは普通(12Turbo/F5よりはマシ) ・実用性能はSnapdragon 7+ Gen 2や8+ Gen 1機に劣る |
デザインはゴテゴテでカメラ周りが巨大 or タピオ化した最近の端末と違いシンプルで、背面・ディスプレイどちらもフラット形状かつ6.74インチサイズの割に約195g(200g切り)、メインカメラもコスパ機で多かったOV64Bからそれなりに優秀なIMX890にアップグレード。
OSもOxygenOSで癖があまり無く、ハード・ソフトどちらも扱いやすいです。カメラやスピーカー、デザイン面ではAce 2V(Nord 3 5G)のライバルに近いNote 12 Turbo(POCO F5)より良く、日常使いしやすい端末です。
とはいえ単純にコストパフォーマンス等を追求するのであれば、4~6万円台でSnapdragon 8+ Gen 1を採用したモデルも多く、ベンチマーク上の数値ではDimensity 9000が上ですが…Snapdragon 7+ Gen 2の方がゲーム性能や電力効率は良いです。やや高めな5~6万円でDimensity 9000は正直微妙。悪く無いけど…って感想です。
総合性能しか見れないAntutuや原神等の良い部分だけ見たら、「Snapdragon 8 Gen 1以上」になるのは当然といえば当然。個人的にはDimensity 9000は「良くも悪くもSnapdragon 8 Gen 1のライバル」で、それ以上でも以下でもないSoCという印象です。電力効率や発熱面は良く、過大評価とは言わないですが…うーん…。
Dimensity 9000は何処か初代Ryzen 1000系(Zen)っぽい印象で、9000+はZen+、9200系がZen 2で名実共にZen 3みたいな完成された存在になるのは9300…みたいなイメージです。何となく伝わる…伝わらない?
コメント
4~5月頃のNote 12 TurboではCPDT Benchmarkの読み書きが遅い問題は当時のMIUIが原因だったとは初めて知りました。
知れて良かったです。ありがとうございます。
Xiaomi 13T ProでモンスターハンターNOWをプレイしているのですが、Snapdragon搭載機と比べて露骨に動作が悪いので国産ゲームはDimensityに最適化していないと踏んでいましたが、レスレリの結果を見て認識は間違えてなさそうだと思いました。
Note 12 Turboの件は確定事項かと言われると微妙なんですが、ゲームターボに入れなくてもランダム性能が普通に初期よりマシになったので、消去法でそうかな程度です。
過ぎたこととはいえ、触れないのもアレかなと思いついでに消化しました。
モンハンNOWもそういう話をチラホラ見かけますね。本当は「MediaTekは最適化ガー」とか言いたく無いんですけど…原神だけでゲーム性能を判断するのは不味いと感じてます。
OnePlus Nord3(16/256GB)、最近購入して使用しています。
記事にある通り、ハイエンド級の性能ではありませんが使いやすく、時計の赤いワンポイントもカッコよくて個人的にお気に入りになりました。
OnePlusもOPPO同様に国内仕様が欲しくなる所ですが、難しいのですかね
ZTEやXiaomi、Nothingの例を見るに、別に日本で売ること自体はそんなに難しく無さそうですが、OPPO本体とオウガジャパンが日本市場に対して、保守的になりすぎてるので希薄です。
何よりOnePlusは、比較的オタクやゲーマー向けに近いので、コアな層の少ない日本だと…。