中国のオーディオブランド”Hidizs様”より「Hidizs XO」の先行レビュー依頼があり、サンプル品をいただきました。
スペック・仕様
製品 | Hidizs XO Single-ended & Balanced MQA Dongle |
カラー | ブラック シルバー ローズゴールド |
サイズ | 55×24.5×9.35mm |
重さ | 11g(実測値16.4g) |
DAC | ESS ES9219C×2 |
インターフェース | 入力:USB Type-C 出力:シングル 3.5mm/バランス 2.5mm |
フォーマット | PCM:44.1~384KHz(16~32bit) DSD:64~256 MQA:16x |
出力電力 | シングル:78mW+88mW@32Ω バランス:195mW+195mW@32Ω |
TDN+N | シングル:0.0015% バランス:0.0005% |
SNR | シングル:118dB バランス:119dB |
クロストーク | シングル:76dB バランス:118dB |
開封・内容物
箱はポータブルオーディオ機器やイヤホンなどにありがちな小振りのBOXです。燕文物流→佐川経由で中国から来ましたが、角の潰れや外装がボロボロな感じはなく綺麗な状態で届きました。
ドングルや説明が表記された部分はスライドカバー的な感じで、BOX部分は黒基調の蓋部分にメーカーロゴが刻印されたシンプルなものになっています。
中の梱包は硬めのスポンジで囲われていて、紐状の部分から本体を引き上げる中華圏のオーディオ機器ではよくあるタイプです。雑なメーカーだとこの辺が適当ですが、中も綺麗に梱包されていました。
今回いただいた”サンプル品”の内容物です。本体カラーはアルミ合金が映える銀(シルバー)をお願いしました。
- USB Type-C to Cケーブル
- USB Type-C to Type-A変換アダプター(USB 2.0)
- 保証書等のマニュアル類
外観
Hidizs XOは一体成形された高密度アルミニウム合金のシェルを採用しており、55×24.5×9.35mmでコンパクトな手のひらサイズのUSB DAC&AMPとなっています。
外観デザイン”は”シンプルにまとまっています。大凡のサイズ感としては、一般的なUSBメモリとUSB Type-C to 3.5mm変換アダプターを足した様な具合です。
正面側は”Hidizs”ロゴとRGB LEDを制御するためのX型のボタン、フィルターモード切り替えとサンプリングレートインジケーターライトを備えたO型のボタンがあります。底面には”ESS”や”MQA”などの表記がされています。
本体側面上部側に、シングル 3.5mm/バランス 2.5mmの出力、側面下部にUSB Type-C入力が備わっています。
側面はHidizの頭文字”H”の要素が取り入れられた複雑な金属加工が施されたデザインをしており、内蔵されたRGB LEDライトが加工部分から制御パターンに合わせて発光します。
このRGB LEDはHidizsの特許技術らしく、加工も含めてコストが掛かっていそうですが…単色発光ならまだしも、音楽鑑賞中にRGBでビカビカに光られても特にメリットは感じないです。せっかくシンプルな外観なのに…。
恐らく背景としては、ゲーミング機器などでのRGBライティングの流行やビジュアル面でも他社と差別化を図った結果なのだとは思いますが…Hidizs XOをオーディオ機器として見た場合、私的には不要な部分だと感じました。
本体の重さは16.4gでした。公称値では11gですが…実測だと5g弱重かったです。苦になる重さではないですが。
Hidizs XOとスマートフォンを接続するとこんな感じです。
付属のType-CケーブルでHidizs XOとデバイスを接続する場合、両側のコネクタで動作するわけではなく”Hidizs”ロゴが入ったコネクタ側をデバイスに接続する必要があるので向きに注意が必要です。
サードパーティ製のType-Cケーブルでは、どちら側のコネクタで接続してもHidizs XOを認識します。取り回しも含めて社外品にリケーブルしても良いかもしれません。ケーブル一体型ではないため、万が一断線しても安心です。
Hidizs XO特有なのかは分かりませんが…1つ不安要素があり、長期間Hidizs XOを使用しないで放置すると、サードパーティ製のType-Cケーブルではデバイスとの接続が一時的に無効化されます。
どういうことかと言えば、Hidizs XO自体への給電は可能なのですが、ケーブルで接続してもDAC&AMPとして認識しなくなります。故障したのかと思うような動作です。
通電自体はされるのでLEDライティングは楽しめますが…音の出ないオブジェと化します。こうなった場合、付属のType-CケーブルでHidizs XOとデバイスを接続すると認識が復活します。
ただ認識を復活させてもWindowsの場合はデバイスドライバーの再インストールをしないと動作が不安定化し、3分くらい経つとデバイスとの接続が勝手に切れる現象が発生しました。(ドライバの当て直しで復活)
ロゴの向きと言い、Hidizs XOのUSB周りの仕様はハッキリ言って意味不明です。事実上、サードパーティ製ではなく付属のType-Cケーブルを強制されているようなもので、折角分離タイプなのに…って感じます。
ポータブルDAC&AMPなので使いたいときだけ使ったとして、しばらく放置するとサードパーティ製のType-Cケーブルだとデバイス接続を認識しなくなる…なんて仕様は、何を考えてるのか私には理解できません。
あくまで私のサンプル品のHidizs XOのみがこの仕様で、製品版はこんな仕様でないことを願います。
動作確認
Android
ハードウェアレベルでカスタム可能な音楽プレイヤー「Neutron Music Player」で、Androidでの動作を確認します。
ダイレクトUSBアクセス OFFで、Hidizs XOをそのまま接続した場合「USB Audio-Hidizs XO DAC&」として認識。USBデバイス(Hidizs XO)へ直接アクセス許可していないため、出力上限は96KHzでした。
ハードウェアゲインもHidizs XO側ではなく、接続したデバイス側になってしまうため、ただそのままデバイスと接続しただけではHidizs XOをUSB DAC&として活かせません。
Hidizs XOなどUSB DACをAndroid端末で使用する場合は、HiBy MusicやNeutron Music PlayerなどのDACのポテンシャルを活かせてロスレスなプレイヤーが必須です。
ダイレクトUSBアクセスをONにすることで「Hidizs XO DAC&」として認識、スペック通り44.1~384KHzで動作し、USB DAC&としてフルに活かせます。
Hidizs XOのO型ボタンに備わったインジケーターライトは、サンプリングレートによって表示色が変化します。
カラー | サンプリングレート |
● | PCM:352.8/384KHz |
● | MQA(16x) |
● | PCM:176.4/192KHz |
● | PCM:44.1~96KHz |
● | DSD:64/128/256 |
ネイティブのサンプリングレートだけでなく、プレイヤー側でオーバーサンプリング(アップサンプリング)した場合でも変化は有効です。(例:PCM 44.1KHzを8倍オーバーサンプリングした場合、352.8KHzのため赤色発光)
また、O型ボタンを長押しすることで2種類あるフィルターモードの切り替えも可能です。
Windows 11
Windows 11環境のPCと接続するとヘッドホン(Hidizs XO DAC&)として認識。Windows標準ドライバーで384KHz(32bit)まで設定可能でした。インジケーターライトの動作は前述の通りです。
Windowsの場合、PCMのサンプリングレートとbit深度はスペック上のものに対応していて必要十分な音質ですが、より劣化の少ないbit-perfect再生のためのWASAPI排他設定は、AIMPやfoobar2000など再生ソフト側で行います。
スマホ給電時の消費電力
参考程度ですが、Hidizs XOをスマホ側から給電して駆動させた時の消費電力を測定しました。
【条件】
- インピーダンス62Ω、感度105dBのAKG K712 PROを使用、端末はXiaomi Mi 11i+Neutron Music Player
- Neutron Music Player側からHidizs XOのハードウェアゲインを50に設定
- フォーマットは上限値のPCM 384KHz、音源は44.1KHz(16bit)320kbps(ABR)のmp3
- 64bit処理&CPUリサンプリング”最高”、音源を8xオーバーサンプリングし352.8KHzで再生
Neutron Music PlayerでHidizs XOを駆動させたXiaomi Mi 11iから、RT-TC5VABK読みで5.096V0.169A=0.861WがHidizs XOへ給電されていました。
端末側のバッテリー残量50%状態から30分間、ハードウェアゲイン50で352.8KHzにオーバーサンプリングした音源をK712 PROで試聴した際、5%程度のバッテリー消費量でした。30分で5%なので、単純計算で1時間辺り10%程度のバッテリー消費です。
Neutron Music Player側で、オーバーサンプリングや64bit処理などを有効化して高負荷で駆動させた割には、想定より電力を消費していないと感じました。USBバスパワー駆動で至極当然の結果といった印象です。
気にする程ではありませんが、アルミ合金製のシェル自体が放熱の役割を担っているのか、ES9219C2基の構成も起因して本体はほんのり温かくなります。
使ってみる
試聴環境
「Chord & Major」で1時間エージングしてから試聴しました。いつも通り試聴にはAKG K712 PROを使用、ケーブルには今回Hidizs XOが3.5mmのため、標準付属のカールケーブルを使いました。
ハードウェアは、Windows 11環境のデスクトップPCとAndroid 13のXiaomi Mi 11iを使用。その他は以下の通りです。
試聴機材 | Hidizs XO Single-ended & Balanced MQA Dongle AKG K712 PRO |
OS | Android 13 Windows 11 |
ソフトウェア | Neutron Music Player(ダイレクトUSB駆動) AIMP(WASAPI Exclusive) |
フォーマット | PCM:44.1KHz(16bit) |
音源 | MP3:44.1KHz(16bit)/ビットレート320kbps(ABR) |
試聴楽曲 | ・「星灯」 ・SAVIOR OF SONG ・アシンメトリー ・aLIEz ・ともしびの消える前に ・麟躍幽岩 ・亡失のエモーション |
聴いてみて
正直、USBバスパワー駆動なので大したことないだろうと思っていましたが、良い意味で裏切られました。かなりパワフルで、62ΩのAKG K712 PROを十分鳴らせるだけのボリュームがでます。
Windows(WASAPI)では65~80、Android+Neutron Music Playerではゲイン60~75辺りで十分と感じるレベルで、メインで愛用しているTOPPING L30&E30のハイモード(9.5db)、ボリュームダイアルが時計でいう12時方向…に匹敵します。
低価格帯とはいえ、据え置きヘッドホンアンプのTOPPING L30に匹敵する音量をUSBバスパワーかつポータブル向けのアンプで出せるとは思っていなかったので驚きました。
音質については、流石ES9219C2基の構成といった具合で、高解像度でキレの良いサウンドだと感じました。
特性は中華特有の”若干”ドンシャリと言った感じで低域の出が良く、反面高域はややシャリついたりボーカルがたまに刺さる感じですが…強いて言えば程度のドンシャリ具合で、DACの特性自体はフラットだと思います。
邪推ですが…2種類あるフィルターモードが原因で低域が少し盛られている or 中・高域が低域に比べて減衰しているかもしれません。
フィルターを完全にOFFにできれば比較しやすいのですが、2種類の切り替えのみでどちらかのフィルターは常に有効化されており、フィルターの効果自体が微妙な差でしかないので何とも言えないです…。
Hidizs XO自体のキャラクターとしては無機質・機械的でデジタルな硬めの印象で、温かみや柔らかさを感じる音ではないです。レンジはそれなりに広く、音の分離感も悪くないので聴き分けしやすく見通しは良好です。あと、個人的に最も懸念していた”USBバスパワー駆動故のノイズ”とは無縁で杞憂でした。
音の好みはあると思いますが、USB DAC&AMPとしてバスパワー駆動ということを考えれば、十二分な音質と駆動力だと思います。
まとめ
良い | 悪い |
・アルミニウム合金のシェルを採用し、コンパクトでシンプルなボディ ・シングル 3.5mm、バランス 2.5mm出力の2つに対応 ・入力端子がUSB Type-C&取り外せるケーブル分離タイプ ・ESS ES9219Cを2基搭載&独立水晶発振器採用 ・USBバスパワー駆動でもインピーダンス62Ω、感度105dBのAKG K712 PROをドライブできる高出力(最大300Ω対応) ・バスパワー駆動だがノイズが殆ど無い | ・付属のType-Cケーブルに向きがあり、”Hidizs”ロゴをデバイス側に接続しないとドングルを認識しない謎の仕様 ・長期間Hidizs XOを使用しないでしばらく放置すると、サードパーティ製のType-Cケーブルだとデバイス接続を認識しなくなる ・USB Type-Cの仕様に違反したC to A変換アダプター ・USBバスパワー駆動相応の電力消費、アルミボディ&Dual DAC構成なので本体がほんのり温かくなる ・光らなくても良かった |
Hidizs XOはコンパクトボディでポータブルでの取り回しも良く、USB Type-Cケーブル1本でPCやスマホのオーディオ出力よりも圧倒的な音質と駆動力をUSBバスパワーで実現しています。
入出力は利便性が良く、ケーブルも分離式のため用途に合わせて長さの変更や万が一断線しても、リケーブルが容易で使い勝手は良く感じます。
一方で、付属のType-Cケーブルでは接続の向きがあったり、気にしてもしょうがないですが…C to Aの変換アダプターはType-Cの仕様には違反しており、これら付属品の使い勝手が良いとは言い難いです。
あと、長期間Hidizs XOを使用しないでしばらく放置すると、サードパーティ製のType-Cケーブルだとデバイス接続を認識しなくなる等…USB周りの仕様はハッキリ言って意味不明ですね。
またユニークではありますが…正直、RGB LEDのギミックは音質には関係なく、特許取得などコストも掛かっていそうなのでインジケーター以外は光らせなくても良かったと私は思いました。