元値8万円程度でソフトバンクが取り扱い、価格改定で3万円前後まで値下げされて一部で人気になった、Snapdragon 7 Gen 3搭載の「motorola edge 50s Pro」を購入したのでレビューします。
motorola edge 50s Pro
スペック・仕様
motorola edge 50s Pro(XT2403-5) | |
OS | Hello UI(Android 14ベース) |
SoC | Snapdragon 7 Gen 3(TSMC 4nm N4) |
メモリ | 8GB(LPDDR4X) |
ストレージ | 256GB(UFS 2.2) |
ディスプレイ | 6.7インチ pOLED (2712×1220/最大144Hz) |
サイズ・重さ | 161.23×72.4×8.19mm/186g |
バッテリー | 容量:4500mAh プロトコル:125W TurboPower(拡張USB PD PPS) |
カメラ | 50MP(メイン:OmniVision OV50E 1/1.55型) 13MP(超広角:Hynix Hi1336 1/3型) 10MP(3倍望遠:Samsung ISOCELL S5K3K 1/3.94型) 50MP(フロント:Samsung ISOCELL JNS 1/2.76型) |
インターフェース | USB Type-C(USB 3.1 Gen 2/10Gbps) nanoSIM+eSIM |
オーディオ | ステレオスピーカー Hi-Res Audio(44100~192000Hz) コーデック:LHDC(V5/3/2)/LDAC/apt X(Adaptive/TWS+/HD)/AAC/SBC |
接続規格 | Wi-Fi 6E/Bluetooth 5.4/NFC(FeliCa対応) |
防水・防塵 | IP68 |
生体認証 | 光学式画面内指紋認証/顔認証 |
その他 | ・motorola edge 50 Pro≒edge 50s Pro(ソフトバンク向け廉価版) ・スペック参考元:softbank.jp/motorola.co.jp/gsmarena.com |
開封・内容物
motorola edge 50(s)Proはリリース当初から気になっていて、読者サンから「edgeシリーズが気になる」とコメントされた&価格改定+MNPでかなりお手頃な価格になっていたので、読者アンケートを実施してedge 50s Proが選ばれたので購入しました。
正規代理店の“某.com“経由でソフトバンクにMNPして、一括9824円でした。(端末は餌でメリハリ無制限+事務手数料が本体な価格…)
(試しで)某.com経由で契約しましたが、Y!mobileとかみたいにオンラインで完結しないし、端末代は代引き&現金支払のみだったので…なるべく経由したくないですね…。
内容物は本体とedge 50s Proを最高速で充電する際に必要なACアダプターとケーブル、マニュアル類。公開市場版のedge 50 Proでは側面保護ガバガバケースが付属してるみたいですが、ソフトバンク版だと省かれてます。(ACアダプターが省かれるよりは全然マシ)
パッケージ内容 |
・motorola edge 50s Pro ・ACアダプター ・USB Type-C to Cケーブル ・SIMピン ・マニュアル類 |
保護フィルムは貼り付けられていないので別途、用意する必要があります。TPUタイプの2枚入りが無難です。
デザイン・外観
リュクスラベンダーも捨てがたかったのですが、限定カラーの文言に負けてソフトバンク限定色のバニラクリームを選定。
motorola edge 50s Proはヴィーガンレザー仕上げの背面パネルを採用しており、レザー特有の柔らかい感触で手触りが良く、指紋なども目立ちにくいです。
限定色のバニラクリームは確かに名前通り、よくあるバニラのアイスっぽい印象を受けます。(ミルキーホワイト/ホワイトイエローに近い)
滑らかな曲線でカメラ部分と背面パネルが一体に見えるデザインで、何処となくOPPO Find X3シリーズを彷彿とさせます。側面フレームはブラスト加工されたマットなアルミフレームで、上部にDolby Atmosのロゴと文字が刻まれています。
レザー素材やマットなアルミフレームにより(ミドルとしては)高級感のある質感で、色合いも相まって全体的に”上品で大人向け”な印象を受けます。
ディスプレイ・背面パネルどちらもフレーム部分まではラウンドしたエッジ形状を採用しており、持ちやすいです。(ただしディスプレイもエッジ形状なので好みは分かれる)
motorola edge 50s Proの重さは190gでした。レザー素材のおかげで6.7インチにしては軽く、エッジ形状も相まって持ち心地や手に馴染む感覚が直感的に「…これ良いな」と感じさせます。(それだけにミドルスペックなのが悔やまれる1台でもありますが…)
OS:Motorola独自のHello UI
motorola edge 50s Proは、Android 14ベースのMotorola独自UI「Hello UI」を搭載しています。
Motorola系アプリの他、edge 50″s”Proなので…どうでもいいソフトバンク系のアプリもちらほら。邪魔なので大体は「ADB App Control」で消してます。
Hello UIはPixel等のAOSPライクなAndroid OSを「より使いやすくしたUI」になっていて、AOSP系のAndroidで不便だったり、もどかしく感じる部分が改善されています。
コントロールセンターは従来のクラシック、HyperOSやColorOSのように通知・コントロール部分に別れたモダンスタイルから選べます。もちろん下手なAOSP系みたいに”Wi-Fiのワンタップ切り替えが出来ない”なんてこともありません。
デザイン的な部分含めたカスタマイズ性も独自UIらしく豊富で、ダブルタップで画面ON・OFFの対応やナビゲーションバーの非表示が地味ながら嬉しいです。
アプリごとのバックグラウンド使用を変更したり、過充電を防止する機能等も使用可能です。
AOSP系のAndroidはシンプルで癖が少ない点は良いものの、Pixelやarrows辺りはカスタムする方向性がズレていて使い勝手が悪く、OS体験の時点でダメだと他が良くても使う気にならず、最近のAOSP系は苦手でしたが…Hello UIくらい機能性を足してくれたUIなら使おうと思えます。
ちなみにMotorola端末なので、edge 50s Proもブートローダーアンロックしてゴニョゴニョできます。
ディスプレイ
motorola edge 50s Proは約6.7インチ・2712×1220(1.5K)で最大144Hz駆動(LTPS)に対応した、エッジ形状のpOLEDディスプレイを搭載。
色見本企業「Pantone」の評価基準を満たした”Pantone Validated colour”のカメラとディスプレイを搭載しており、自然な色合いで1.5K解像度(公式的にはSuper HD)も相まって、ミドルレンジとしては中々に高品質で綺麗です。
発光材までは不明なものの…近年のMotorola端末はCSOT製のFlexible AMOLEDを採用しているらしく、edge 50(s)ProのサブピクセルはTCLの珍珠(パール)配列です。BOEの蓝钻(ブルーダイヤモンド)配列等と比べて緑部分が楕円形だったり、若干形が異なります。
BOEやVisionox製の中位以上の発光材慣れした側から見ても中々綺麗で、サプライヤーがTCLかつ1.5K&紅米Note 13系列でC7が採用された例もあるので、C6~C7相当の発光材を使ってるんじゃなかろうか?と思ってます。(配列的には紅米K60系/C6に近い)
WidevineセキュリティレベルはL1に対応。動画ストリーミングサービスで高画質な再生が可能です。
Type-Cポートと充電速度
motorola edge 50s Proは最大10Gbpsのデータ転送に対応する、USB 3.1 Gen 2のType-Cポートを採用。外部出力にも対応しています。
画面のミラーリング(複製)以外にも、Galaxy(Samsung Dex)のようにスマホ上の画面とは別で、専用のデスクトップUIでパソコン的な使い方が可能な「Ready For」機能が備わっています。Ready For時はデバイス側をマウス等のように使うことも可能です。
…ちなみに公式サイト等には「Type-C (USB 3.1、DP 1.4)」しか記載されておらず、正確な規格がハッキリしなかった&大手メディア等もコピペしただけだったのでサポートに聞いたところ、edge 50(s)ProはUSB 3.1 Gen 2(10Gbps)だそうです。
公式の記載もアレですが…色々と優遇されてる側の大手メディア等が、コピペ情報しか出していないのは残念です。(まぁ…DP 1.4可なUSB 3.1だったら、Gen 2の可能性があると予想はできますが)
motorola edge 50(s)Proは最大125W出力が可能な”125W TurboPower”での充電に対応しており、(ソフトバンク版でもケチられず)対応するACアダプターとケーブルが付属しています。(型番:MC-1251、単品だと8800円もするGaNトランジスタ採用品)
付属のMC-1251はQC 3.0とPD 3.0、DCPプロトコルをサポート、Type-C to CケーブルはLenovo・Motorola製品で見かける20V5A対応のケーブルです。
125W TurboPowerは、MC-1251とeMarker(Motorola)の組み合わせで出力されるMotorolaが6.25Aに拡張したMOTO PPS的な存在で、Motorola以外のeMarkerでは一般的なUSB PD(PPS)100W充電器になります。
motorola edge 50s Proを付属のMC-1251で充電し、バッテリー残量5%状態から95%までの充電経過をKM003C+Mtoolsで簡易的に計測してみると、所要時間は約17分程度・ピーク時の出力は約104Wでした。
edge 50s Proが最近の端末としては容量の小さい4500mAhなのもありますが、それを差し引いても100Wクラスの出力がされるだけあって非常に高速です。バッテリー90%前後まで40W近い出力が維持されていたのも個人的にはポイント高いです。
POWER-Z KM003C+Mtoolsでの簡易計測(バッテリー5%→95%) | |
TurboPower 125W 所要時間:16分53秒 | 最大電圧:約18V |
最大電流:約5.8A | |
最大出力:約104W |
125W TurboPowerの中身はUSB PD(PPS)なのでMC-1251が無い場合でも、edge 50s ProをPD(PPS)100W対応のACアダプターで90~100W近い出力で充電可能です。
MC-1251はただのUSB PD(PPS)100W対応ACアダプターとしても使えるので、最近増えつつあるPD(PPS)でも高出力に対応した端末を充電するのにも適しています。
オーディオ
motorola edge 50s ProはDolby Atmosに対応しており、各プリセットや空間オーディオ、イコライザーの調整等が可能です。
いつも通り「Neutron Music Player」と、USB Type-C to 3.5mm変換アダプター(アナログ式)を使って、再生可能な周波数などを確認。デフォルト設定では48000Hz(16bit)固定でした。
Dolby Atmosが有効化されている場合、スピーカー・外部出力の周波数は48000Hzで固定されます。なのでDolby AtmosをOFFにできないスピーカーでの再生中は、強制的に48000Hzへアップ・ダウンサンプリングされます。
外部出力時にDolby Atmosを無効化し、ドライバー設定からHi-Res系の出力を許可すると44100~192000Hzまで出力可能になり、ネイティブ192KHz(24bit)のFLAC音源再生時もノイズや出力低下は発生せず、しっかり再生できていました。
motorola edge 50s Pro:Hi-Res Audio&アナログ出力テスト | ||
再生可能周波数 | Speaker:48000Hz(固定) Line-out:44100~192000Hz | |
アナログ出力 | 可能(DAC非搭載の変換アダプターもOK) |
edge 50(s)Proのステレオスピーカーは筐体下部側に音が偏っていてバランスが悪く、基本的にDolby Atmos(空間オーディオ)前提で有効化後はある程度、左右のバランスが良くなります。(ちなみにアンプはAwinic Electronics製のaw882xx_smartpa×2)
肝心の音質はミドルレンジにありがちな、カマボコ型に近い音の傾向でどうしても低域があんまり出ないので、迫力には欠けます。Redmi Note 13 Pro 5G以上・realme GT Neo6 SE未満…OPPO A79相当(やや上)くらいの「悪くないが良くもない音質」です。
Snapdragon 7 Gen 3の仕様・スペック
ベンチマークの前にいつも通り、motorola edge 50(s)Proが採用したSnapdragon 7 Gen 3のスペック・仕様を簡単に解説します。(参考用・構成解説の比較にはSnapdragon 7 Gen 1と7+ Gen 2を選定)
SoCのスペック・構成解説表 | |||
SoC | Snapdragon 7+ Gen 2 | Snapdragon 7 Gen 3 | Snapdragon 7 Gen 1 |
プロセス ノード | TSMC 4nm(N4) | TSMC 4nm(N4) | Samsung 4nm(4LPX)※¹ |
ダイサイズ | ? | ? | 77.80mm² |
CPU | 8C8T(1P+3P+4E) | 8C8T(1P+3P+4E) | 8C8T(1P+3P+4E) |
X2(2.91GHz)×1 A710(2.49GHz)×3 A510(1.8GHz)×4 | A715(2.63GHz)×1 A715(2.4GHz)×3 A510(1.8GHz)×4 | A710(2.4GHz)×1 A710(2.36GHz)×3 A510(1.8GHz)×4 | |
キャッシュ 構成 | X2:1MB(L2) A710:512KB(L2) A510:128KB(L2) 6MB(共有L3) SLCキャッシュ:2MB | A715:512MB(L2) A715:256KB(L2) A510:?KB(L2) 2MB(共有L3) SLCキャッシュ:1MB | A710:256KB(L2) A710:256KB(L2) A510:128KB(L2) 2MB(共有L3) SLCキャッシュ:2MB |
GPU | Adreno 725 (4コア:580MHz) | Adreno 720 (?コア:975MHz) | Adreno 644 (3コア:443MHz) |
NPU | Hexagon | Hexagon | Hexagon(7th Gen) |
ISP | Spectra(Triple 18bit) | Spectra(Triple 12bit) | Spectra(Triple 14bit) |
メモリ | LPDDR5(3200MHz) | LPDDR5(3200MHz) LPDDR4X(2133MHz) | LPDDR5(3200MHz) LPDDR4X(2133MHz) |
ストレージ | UFS 3.1 | UFS 3.1 | UFS 3.1 |
通信モデム | Snapdragon X62 5G | Snapdragon X63 5G | Snapdragon X62 5G |
接続規格 | Wi-Fi 6E Bluetooth 5.3 | Wi-Fi 6E Bluetooth 5.3 | Wi-Fi 6E Bluetooth 5.2 |
オーディオ | Qualcomm WCD9385 | Qualcomm WCD9385 | Qualcomm WCD9385 |
内部コード | SM7475-AB | SM7550-AB | SM7450-0-AB |
コードネーム | ? | ? | Fillmore |
採用端末例 | Redmi Note 12 Turbo (Xiaomi POCO F5) Realme GT Neo 5 SE | OnePlus Nord CE4 OPPO K12(Plus) HTC U24 Pro | OPPO Reno8 Pro motorola razr 40 Libero Flip |
その他 | ・※¹:Samsung 4nm(4LPX)=5nm(5LPP)。4nmは名称のみ。 ・参考元:qualcomm.com/namu.wiki/Kurnalサン/大米評測サン |
Snapdragon 7 Gen 3は2023年11月17日にQualcommが中国で発表した、Snapdragon 7 Gen 1の後継にあたる製品です。
CPUは高性能コアに2.63GHz駆動のCortex-A715を1基、A715(2.4GHz)を3基、高効率コアにCortex-A510(1.8GHz)を4基採用した8コア構成で、2MBの共有L3キャッシュと1MBのSLCキャッシュを備えています。
GPUはAdreno 6xxシリーズ(Snapdragon 865と同じGPUコアでダウンクロック版)の644だった7 Gen 1から、7xx系のAdreno 720(975MHz)を採用。
メモリはSnapdragon 7 Gen 1に引き続き、最大LPDDR5(3200MHz)・ストレージはUFS 3.1をサポート。
ISPはTriple 14bitだったSnapdragon 7 Gen 1から微妙にスペックダウンして、12bit化&ZSL環境下でのサポートも84MP→64MPにダウン。(ただし処理ピクセル数は1秒あたり2.5→3.0Gに改善…)
7 Gen 1比での7 Gen 3への改良点はSnapdragon 8 Gen 1等を製造した悪名高いSamsung 4nm(4LPX)から、優秀なSoCを数多く製造したTSMC N4への変更とGPU部分の更新が主で、それ以外は大きな変更は無く「Gen 3」を名乗る程かと言われると…。
個人的にはSnapdragon 7 Gen 3こそが、7 Gen 1の後継として「Snapdragon 7 Gen 2(無印)」を名乗るべき存在だと思っています。
ベンチマークテスト
ミドルハイ・ハイエンド向けのベンチマーク内容とは別で、Snapdragon 8 Gen 1以下のローエンド~ミドルレンジ帯は軽量的な”lite版”のレギュレーションでテストします。(ミドルハイ以上向けVer.1.2と同様、lite版も少し調整して1.1化)
りとらいん:ベンチマークレギュレーション Ver.1.1(lite) | |
CPU性能 | Geekbench 6 CPU電力効率曲線 |
GPU性能 | 3DMark Wild Life Extreme GPU電力効率曲線 |
ストレージ メモリ性能 | CPDT Benchmark |
ゲーム性能 | 原神/スメールシティ 夜蘭C1ランニングテスト(15分間) |
崩壊:スターレイル/仙舟「羅浮」 星槎海中枢ランニングテスト(15分間) | |
【motorola edge 50(s)Pro】 ・OS:Hello UI(Android 14ベース/U2UMS34.27-63-2-6) ・SoC:Snapdragon 7 Gen 3 ・メモリ:8GB(LPDDR4X) ・ストレージ:256GB(UFS 2.2) ・動作モード:ターボモード(Hello UI/ゲームモード) | |
その他 | ・リフレッシュレート:各端末での最大値 ・ディスプレイ輝度:各テスト端末での50%固定 ・通信環境:Wi-Fi 5(5GHz接続)&機内モード |
消費電力や温度、フレームレートなどの測定には従来に引き続き、Scene 8(TOOLBOX-SCENE)のadb/rootモードを利用。
また、比較に使用した各端末の詳細やデータは興味があれば、りとらいん内の各レビュー記事を参照して下さい。
Geekbench
Geekbench 6 | |
【Snapdragon 7 Gen 3】 Cortex-A715(2.63GHz)×1 Cortex-A715(2.4GHz)×3 Cortex-A510(1.8GHz)×4 | |
シングルコアスコア:1153 マルチコアスコア:3124 最大消費電力:5.07W |
CPU性能を計測するGeekbench 6の結果です。Snapdragon 7 Gen 3(edge 50s Pro)を含めて、スコアを比較したグラフは以下の通り。
シングル・マルチ性能どちらもSnapdragon 865~870相当で、Snapdragon 855クラスだった7 Gen 1(とお仲間の7s Gen 2/778G/780G系)から若干のスペックアップです。ピークスコアだとSnapdragon 888や初代Google Tensorにはまだ勝てません。
いつも通り最大スコア÷5/×4/+各SoC最小周波数の計5点でマルチスコアと最大消費電力を測定し、簡単な消費電力あたりの性能曲線を作成して各CPUのワットパフォーマンスを確認。(lite版だと久々にマトモな曲線の追加です)
縦軸がスコア・横軸が消費電力で、基本的に電力性能曲線は測定点・曲線(カーブ)が左上になるほど良く、右下になるほど悪いです。
スコア的にはSnapdragon 865~870クラスで”7 Gen 3″を名乗る割に肩透かし感のある存在ですが、電力効率で見るとSnapdragon 7 Gen 3は7+ Gen 2に匹敵し、Snapdragon 888(Samsung SF5E)や870(TSMC N7P)を明確に上回ります。
Samsung 4nm(4LPX)なSnapdragon 7 Gen 1や7s Gen 2、初代Tensor(SF5E)よりも圧倒的に優秀な電力効率で「TSMC N4で製造されただけのことはあるSoC」です。
3DMark
3DMark Wild Life Extreme | |
【Snapdragon 7 Gen 3】 Adreno 720(975MHz) | |
Overall score:1482 最大消費電力:4.14W |
GPU性能を計測する3DMark Wild Life Extremeで、Snapdragon 7 Gen 3(Adreno 720)はスコア1482でした。比較グラフは以下の通り。
Snapdragon 870(Adreno 650)を明確に上回り、888(Adreno 660)に匹敵するGPU性能です。865のアンダークロック版的存在なSnapdragon 7 Gen 1(Adreno 644)比、約1.8倍近い性能向上で流石はAdreno 72x系のGPUです。(LPDDR4Xなのでフル性能ではない)
各GPUの動作周波数/スコアごとでの最大消費電力を測定し、簡単な消費電力あたりの性能曲線を作成して、各GPUのワットパフォーマンスをWild Life Extremeで確認したグラフが以下の通り。
Snapdragon 7 Gen 3はGPU電力効率も高く、(LPDDR4Xとの組み合わせでも)GPU側も7+ Gen 2と870の間に位置しています。
ピークスコア的にはSnapdragon 888に若干劣りましたが…電力効率では完全に888をノックアウトし、888が7W前後で出せるパワーを7 Gen 3なら4W前後で発揮可能。
先代にあたるSnapdragon 7 Gen 1からGPU部分は大幅に改善されています。
CPDT Benchmark
CPDT Benchmarkでストレージ・メモリ性能をテスト。テストのファイルサイズは1GB、BufferingやCacheはOFFの標準設定です。
CPDT Benchmark | |
【シーケンシャル性能】 書き込み:445.57MB/s 読み込み:750.71MB/s | |
【ランダム性能】 書き込み:30.84MB/s 読み込み:31.75MB/s | |
【メモリコピー性能】 5.72GB/s |
motorola edge 50s Pro(UFS 2.2)のストレージ性能は、シーケンシャル性能はUFS 2.2として平均的な性能で、ランダム性能は下手なUFS 3.1端末よりも高速です。
メモリコピー速度はLPDDR4X相応の性能でLPDDR5以上とは明確な差があります。
ゲーム性能
原神(Genshin Impact)
Snapdragon 855・メモリ6GBクラスに推奨スペックが引き上げられた「原神(Genshin Impact)」での性能をテスト。
現在だと原神は中量級程度の負荷なタイトルです。オープンワールドタイトル相応にCPU性能が動作に影響します。
スメールシティ/夜蘭C1ランニングテスト(15分間) | |
フレームレートや消費電力、CPU動作クロックなどの計測結果 | |
平均フレームレート:40.6fps 最低(下位1%):31.0fps | 平均消費電力:4.32W 最大バッテリー温度:33.0℃ |
スメールシティ/夜蘭C1ランニングテスト(15分間)でのフレームレートは平均40.6fps、最低(下位1%)で31fpsでした。
Snapdragon 865~870相当のCPU性能ではあるものの…870との差が開いており、7 Gen 1や7s Gen 2をやや上回る程度の結果です。メモリバス幅の広さの違いによるCPUの仕事量や、870と7 Gen 3のキャッシュ量の違い等も影響していると思います。
クロックやコアの動きを見るにA715(2.63GHz)以外は上限に張り付いているので、CPU以外で空回り・ネックになっている可能性が高いかもしれません。
CPU周りが影響するタイトルだと、Snapdragon 870に劣る場合があるとはいえ…7 Gen 1以上のフレームレートで消費電力は4W前後に収まっているので、物足りなさはありつつも順当な改善は見られます。(ほぼプロセスノードのおかげですが)
崩壊:スターレイル(Honkai:Star Rail)
Snapdragon 855/Dimensity 1000・メモリ6GBクラスが、(一応)推奨スペックな「崩壊:スターレイル(Honkai:Star Rail)」での性能をテスト。
ミドル向けlite版のテスト内容では仙舟「羅浮」に出戻り、星槎海中枢をグラフィック(中)+60fps設定で一定のルートを15分間歩き回りフレームレートを計測。
仙舟「羅浮」・星槎海中枢/ランニングテスト(15分間) | |
フレームレートや消費電力、CPU動作クロックなどの計測結果 | |
平均フレームレート:53.9fps 最低(下位1%):45.0fps | 平均消費電力:4.13W 最大バッテリー温度:33.0℃ |
仙舟「羅浮」・星槎海中枢/ランニングテスト(15分間)でのフレームレートは平均53.9fps、最低(下位1%)で45fpsでした。
CPUボトルネックの原神(スメールシティ)では870に劣っていたものの、CPU性能をそれほど必要とせず、比重がGPU側のスターレイル(星槎海中枢)ではSnapdragon 7 Gen 3が遂に、ミドルレンジ向けのテスト内容で平均・最低(下位1%)のトップを更新。
基準にしているSnapdragon 870を上回り、ついでに非常に保守的な調整がされた格上のTensor G4(Pixel 9)をボコることに成功した、数少ないミドルレンジSoCとなりました。edge 50(s)ProがしっかりVC冷却を装備している恩恵もあると思います。
まとめ:全方位優秀なミドルレンジ
良い | ・上品な背面パネル&ブラスト加工のマットなアルミフレーム ・6.7インチクラスでは比較的軽量(190g) ・AOPS系のAndroidを使いやすくした、Motorola独自のHello UI ・1.5K・144Hz対応、ミドルレンジでは中々に高品質なディスプレイ ・最大10Gbps&映像出力対応のUSB 3.1 Gen 2 Type-Cポート採用 ・高速な125W TurboPower(Moto PPS)対応、ACアダプター&ケーブル付属 ・ステレオスピーカー&それなりに綺麗に撮影できるトリプルカメラ搭載 ・優れた電力効率と870クラスのパワーを持つ、Snapdragon 7 Gen 3 ・ブートローダーアンロック可能 |
微妙 | ・エッジディスプレイなのでフィルムを選ぶ ・スクリーンショット&シャッター音を消すのに(要)ゴニョゴニョ ・最近の端末にしてはバッテリー容量が4500mAhで若干少ない ・7 Gen 3のISP性能とカメラアプリのレスポンスがよろしくない |
流石に元値8万円前後の全部入りに近い端末なだけあって、motorola edge 50(s)Proは(ミドルとしては)全方位で優秀に感じる部分の多い1台です。
価格改定前は2024年のミドル・ミドルハイ端末が豊作だったのもあり、「良いスペックだけど他の端末を差し置いて買うほどじゃない」という感じでしたが、改定後だと逆に「edge 50(s)Pro買わないなら何買うんだ」レベルな存在に化けた印象で、現在の価格ならかなり推せる端末です。
ただ…どこまで行ってもedge 50(s)Proは、ハイエンドっぽい感じのミドルレンジでしかない&7 Gen 3が事実上のSnapdragon 7 Gen 2(無印)のような存在なので、普段使いは十分快適だけど色々やろうとすると物足りなさを感じてしまうところは、ミドル+αなのである程度しょうがないです。
まぁ…「簡単にレビュー」で済まさずに、ベンチ以外はミドルハイ以上と同等レベルの内容にしてる時点で、どのくらい評価しているのかは、ここまで読んだ読者サンなら察してくれると思いますケド…。
コメント
レビュー記事お疲れ様です!870と比べてCPUは同等~微減?GPUは世代差がどうなんだろう…?とか気になってた部分が全部レビューされててありがたや…ミドル機としてかなり優秀そうですね。
ちなみにカメラのレスポンスはプロモードにすると良くなるとか…(他所の受け売り)
プロモードにすると気持ちマシになった気がしないでもないですが、マニュアル撮影苦手なんですよね…。
CPU部分で7 Gen 3搭載機の平均的な結果は860(855+)~865相当、稀に3400くらい(870同等)っぽいです。GPUは優秀なんですけど、CPU部分は7s Gen 3に若干負ける程度には微妙なので()
6.7インチクラスでVC冷却まで入れるとこれぐらいの重量が限度なんですかね~?(Galaxyとかどうやってあのサイズと重量にVC収めてるのかと)
質感は良さそうだし、ケース無しで保護フィルムだけの運用もよさげですな。
一括約1万円で買った場合なら、気にせず裸運用&アンロックしておもちゃに良きです。
DDR4なのが悔やまれますね
ちなみに次回はNeo10Proですか?
Exactly(そのとおりでございます)
コスト的にLPDDR4Xになるのは7Gen1や7sGen2の時と同じですねぇ…
改定後3万円台だから仕方ない面もあるけど頑張ってほしいところですね。
このシリーズ、motorola edge 50(sなし)Pro だとRAM12GBあるんすよね…そっちテストしたらまた結果が変わってたかも?
ちょっと良くなるかもですね、メモリ規格と速度が変わらないので微増するかどうかレベルですけども。
つか、DDR4とDDR5の性能差エグないですか?
店員に一括1万(ただしボツタクリ回線契約必須)でこの機種勧められたんですが、DDR4、8GBが嫌でDDR5、12GBのXiaomi 14Tにしたんですが、正解でしたかね?
3Dゲームとか全然しないんですが、webブラウザタブ100枚常時開いてるような使い方するので
正解かどうかは匿名サンの使い方に14Tが合っているかどうか次第です。
カタログスペック的な話だと、edge50(s)ProよりXiaomi 14T(無印)の方が細かい部分を除けば、大体上です。
総務省が12月26日から端末投げ売り規制するってよ、店頭へいそげ!
motorola edge 50(s)ProとXiaomi 14Tで悩むなあ…
せや、話題になってる端末やし、りとらいんがレビューしとるやろ!
レビューしそうな雰囲気やんけ…あかん26日まで時間ないし、もうXiaomi 14Tにするか
翌日、このレビューが上がる ←今ここ
「りとらいんがレビューしとるやろ」←えぇ…()
HyperOSが嫌いじゃなければメモリ規格とかも新しくて7+Gen3並のD8300Uだし、長い目で見るならXiaomi 14Tで良かったんじゃないですか(他人事)
案件で端末もらってベタ褒めするマネーチューチューバーより、お前のネチっこいレビューの方が信用できんだよっ!
(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ お前のレビューが好きだったんだよ!(唐突な告白は女の子の特権) ♡(˃̶͈̀ロ˂̶͈́ ●)
一転攻勢して語録を多用し始める&話の流れを変えてはいけない(戒め)
ぶっちゃけ、日本向けの中では14T・edge50(s)Proどっちもお買い得なので、この2つから選んでる時点で正解と言えば正解ですし、この辺りのミドルレンジで満足できないなら、ハイエンドに手を出してクレメンスとしか…
モンハンNOWでも負荷中にしても快適なのでGPU部分も高めでSD870くらいかなー?
でも電池の減り少ないし効率よさそう、と思っていたので概ね感覚があっていて嬉しいです
ゲームによってはTensor G4超えるんですね
バランス良くて2台買った甲斐があったー
Pixelがスロットリング前提の保守的な調整なので、ベンチスコアでTensorが勝っても実利用だと普通に870とか7Gen3に負けます。
改定後の値段だと普段用と玩具用で2台買うのも、案外許せちゃう端末ですねぇ…。
普段ゲームしない勢の偏見だと、有名なスマホゲームは大体Snapdragonに最適化されてる印象ですが、逆にDimensityに最適化されてるゲームはあるのでしょうか?
ゲーム業界がSnapdragon贔屓になると、DimensityのImmortalis-G715等は活躍できなくなりそう…
一部のタイトル(主に国産)を除けば、そんなに最適化云々の話は気にするほどでもない&AdrenoやApple系GPUよりもArm GPUに最適化されたタイトルは知らないです。
Snapdragon(Adreno)贔屓&G715が活躍できないという件はよくわかりませんが、(私含めた)大多数の一般ユーザーがその辺を変に気にしてもそんなに大きな意味は無いです。
端末の冷却設計とかSoCの性能を引き出せてるのか、性能面でのメーカー側ホワイトリストの影響などを気にすべきかと。